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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 2
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下先輩。それ、まだ生ですよ?」
「うん」

 大皿から直に口に運ぶ純の姿に京子は呆然とし、秋芳は食事中の笑狸の姿を思い出す。
 人ならざる化生の身だけあって、その胃袋は底なし。食べようと思えばいくらでも食べられるのではいかという健啖ぶりだが、それを彷彿とさせる。
 ビールでのどを潤いつつ、ふと思いついた秋芳が見鬼を凝らし、上から下から、中まで純を凝視すると――。
 半透明のケモノ耳と尻尾が生えている。

「先輩、耳と尻尾が出てますよ」
「わんっ!?」

 飛びあがり己の頭とお尻を押さえる純。

「獣の生成りになってますね。憑かれたのはあの後ですか?」

 生成り。
 霊的存在を憑依させた状態のことで、いわゆる憑き物のことだ。
 霊的存在をその身に宿すという性質上、生成りは霊災の火種。あるいは霊災そのものと見られ、生成りになった者は陰陽医の元に隔離されたり、陰陽庁の監視下に置かれた上で封印術が施され、宿した存在を押さえこむことが求められる。
 特殊な施設への隔離。監禁というやつだ。
 世間的な風あたりも悪く、もし憑依体を制御できなくなった場合は生成り自身が霊的存在へと変質や融合し、最終的にはフェーズ3以上の大規模霊災を引き起こす。
 だが封印の一部を自ら解放して宿した霊的存在の持つ力を自身のものとして使役・利用することも可能であり、強大な能力といえなくもない。
 だが自身を人ならざる存在に近づける行為であり、それゆえ人間性の喪失や自我消滅、暴走の危険も孕んでいる。

「そうよ。あれからあいつの蠱毒に、犬神に憑かれたの」

 蠱毒。
 蠱毒とは虫や動物を使う呪術の一種で、皿に盛ったり壺の中に入れたたくさんの毒虫を殺し合いさせ、最後に生き残った最も強く、そして他の虫たちの恨みの念が凝縮された個体を使って行われる呪詛だ。
 多くの生物を生け贄にし、それを形代にした式神の一種。
 こんにちの汎式陰陽術では呪詛式と呼ばれる式神にあたるが、これを陰陽庁の許可なく、作成・使役することは陰陽法で固く禁じられている。
 たとえ実際に効果が認められない民間伝承やまじないといった、乙種にふくまれるものであってもだ。
 陰陽塾の生徒にはことさら説明するまでもない。

「不覚を取ったけど私だって陰陽塾の二年生よ。意識を完全に乗っ取られる寸前に逆にこっちが犬神を取り込んでやったの」
 
 純のこの言葉に嘘はない。今さっきの見鬼で、他者の支配を受けているような気配は感じられなかったからだ。

「まぁ、完全に制御できてるとは言えないけど……。で、その時に火怒呂(ほどろ)の考えてることが頭に流れてきたのよ」
「ほどろ?」
「ええ、火怒呂六三(ほどろろくぞう)。それが蠱毒をまき散らしてる術者の名前よ」

 蛇の道は蛇
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