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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 1
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。……て、あれ? あれれ?)
(どうした?)
(夏目っちの匂いが、前とちがうような……。これって……)

 動物系使役式の嗅覚は鋭い。においで様々な情報を得ることができる。

「木ノ下先輩。いままで……すみませんでした」

 その夏目が潤んだ瞳で木の下に語りかける。

「……わかります。とてもよくわかります。ぼく、先輩のこと誤解してました。まさか先輩も『同じ』だったなんて……。木ノ下先輩。ぼく、感動しました! まさか先輩にもそんな事情があったなんて! いままでのことは謝ります。先輩の友達にしてください!」
「は? は、はぁっ!? 冗談じゃないわ! 私は、私よりも綺麗な子なんかと仲良くしたくないの!」
「そんなこと言わずに!」
「いやよ、いやったらいや! 春虎君、助けて!」
「え、え〜っと」

 いまいち事態をのみ込めない京子が人差し指を軽くおとがいにあてて冬児に問いかける。

「どうしたの、これ?」
「帰る」

 天馬を担ぎ直した冬児の口からは、ただひと言。それだけだった。





 木ノ下純は怒っていた。涙が出るくらい、怒っていた。
 なによ悪い! いまや男の娘は、社会権を得てるんだからね!
 男の娘が男の子を好きになったっていいじゃない!
 誰かに非難されるいわれなんかないんだから!
 木ノ下純は悲しかった。涙が止まらないくらい、悲しかった。
 最初はあんなに嬉しそうだったのに、男だとわかったら態度が変わるのはなんで?
 男の娘だと好きになってくれないの?
 なんで男の娘だとダメなの?
 木ノ下純は怒り、悲しんだ。
 ちがう。
 そうじゃない。
 わかってる。
 私が男の娘じゃなくても春虎君は――でも女の子だったら――土御門夏目――私より綺麗で可愛い男子――私が本物の女の子だったら――夏目君――土御門の天才――私だって――私が――だったら――春虎君だって――私が――だったら――が――……。
 変わりたい。
 なりたい。
 なんで私は――じゃないの?

(なら変えてやろう)

「え?」

 声が、聞こえた。

(変えてやろう)
 
 ぜー ぜー ひゅー ぜー ぜー ひゅー

 生臭い、獣の息遣いがただよう。
 路地裏の奥から、ふたたび声が響く。

(変えてやろう)

 ぜー ぜー ひゅー ぜー ぜー ひゅー

 路地裏? なんで私、こんな所に……。いつ来たの?
 あの後、春虎君たちと……。
 そう。そうだ。春虎君「ごめん」て言った。ごめん、て……。
 私じゃあ……、今の私じゃあダメだなんだ……

(変えてやろう――)

 ぜー ぜー ひゅー ぜー ぜー ひゅー

 声が、響いた。
 頭の中で。
 木ノ下純の頭の中
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