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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
たわむれ
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の巧みな紙相撲のような様を見せている。
 しばらく押し合い圧し合い、いなしいなされの攻防が続き、同時に床に落ちた。
「あははっ、面白かった。式神でこんなふうに遊んだのなんて始めてよ」
「俺もだ。なんか子どもの遊びみたいだな」

 !?

 懐かしさがこみ上げてくると同時に、胸を針でつつかれたような感覚。続いて違和感がわき上がってきた。

(なつかしい……。ずっと昔、幼い頃にもこんなふうに誰かと遊んだ気がする。だが誰かって誰だ? 俺はあいつに、笑狸に会うまではずっと一人だったんだぞ? そんなことはありえない!)

 大和葛城を本拠とする賀茂の里は連家に生を受けた秋芳は義務教育もそこそこに、もの心ついた時から修行修行の毎日をおくった。
 一年の多くを山に籠もり。木々を飛び、林を駆け、精神を練り、己の霊力を高め、それを呪力に変える(すべ)を覚えた。
 年端もいかない子どもの体に分不相応な高い霊力。山野にあふれる魑魅魍魎らにとっては好餌(こうじ)に見える。同い年の子どもたちが安全な家や学校で遊んでる時期、秋芳はすでに霊災を相手に命がけで戦っていた。
 同い年の子どもらが家族みんなで遊園地や旅行を楽しんでいる時、秋芳はつねに滑落の危険と隣わせの山中で滝打ち、火渡り、あらゆる忍苦の行を耐えていた。
 餓えた熊や野犬の群れと遭遇した時、ヒダル神に憑かれた時、その他あらゆる自然や霊災の猛威にさらされてきた……。
 死を覚悟したことも一度や二度ではない。
 本人の意志以上に、才能の有無が実力を決める。というのが呪術界の定説らしいが、冗談じゃない。あまたの死線をくぐり抜けて修得したこの力。才能なんてチンケな言葉でかたづけてくれるな! と秋芳は言いたい。
 そして長い山籠もりを終え、里に帰った後に待っていたのは畏怖と嫉妬に満ちた人々の視線だった。
 優れた力も度が過ぎれば驚異や恐怖以外のなんでもない。
 父親からも怪物を見るような目で見られた。母親は早くに亡くし、顔も知らない。
 さしもの秋芳も人肌が恋しい。笑狸に出会ったのはそんなおりだ――。

「あー、ほんとうに楽しかったわ。それだけ動かせるようならもう練習の必要ないでしょ。あ……、ねぇ。あなた射覆(せきふ)はできる?」

 部屋のすみに置かれた射覆用の箱を指差して、京子はそう訊いてきた。
射覆とは箱や袋の中に入れた物がなんなのかをあてる陰陽術で、賀茂忠行という平安時代の陰陽師がこれの名人だったと伝えられる。
 また安倍晴明を彩る説話の一つに、このような話がある。

 蘆屋道満という播磨の国の法師が晴明と術くらべをするため京に現れ、二人は天皇の御前で勝負することになったのだが、その内容というのが箱の中に隠されたものを言いあてるという射覆だった。
 しかし道満はあらか
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