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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
たわむれ
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を三角形にしたような切り抜き。人形(ひとがた)と呼ばれる種類の形代。簡易式だ。
これを核に様々な形状に変化させることができるのだが、今はそのままの姿で動いている。
 動かしているのは秋芳と京子だ。二人とも印を結び呪力を送っている。

「あらなによ、あなた普通に動かせるじゃない」
「連日練習してるからね、だが普通じゃダメなんだ。俺は賀茂の人間だからな」
「……たしかにそうね、わかるわ」

 名門としての矜持。陰陽道の大家である倉橋の家に生まれ、その家名に恥じないよう教育を受けた京子にはその気持ちがよくわかった。
 そんな京子の思いを察した秋芳がつけ加える。

「いやまぁ、そんなたいそうなものじゃないけどな。ただ伸び代のあるうちはがんばりたいだけさ」

 ふと、なにかを思いついた秋芳がさらに呪力を送る。ひたいに向け剣指(人差し指と中指を立て、薬指と小指を曲げて、その指先を親指で押さえる)を立て、集中し念を凝らす。

(……点滴穿石、とく心を細くせよ。水滴のみが石に穴を穿つ――)

 糸のように細く、錐のように鋭く研ぎ澄まされた水滴が巌を刺し貫く。
 そのような情景を思い浮かべて、より細部まで呪力をめぐらせる。
 すると簡易式の動きに躍動感が生まれ、節に合わせて踊っているかのような動きをしだした。

「……なにこれ、銃で撃たれてのたうち回る人?」

 がっくし。
 肩を落とす秋芳。どうも自分のイメージ通りの動きにはならなかったようだ。

「『フラッシュ・ダンス』の踊りのつもりだったんだがな。ホワット・ア・フィーリンっ♪ てダンスのシーン」
「昔の映画? あいにくと知らないわね。面白いの?」
「お話は良く言えば王道、悪く言えば陳腐なサクセスストーリー。けどダンスシーンのカメラワークと音楽は評判良いよ。新宿の映画館でリバイバル上映しているから、時間に余裕があるようなら観に行くのを薦めるよ」
「そうねぇ、映画なんてまともに観たのずっと前だし、たまにはいいかも」
 倉橋家の令嬢として茶道や華道や書道、さらに日本舞踊まで習わされていた京子だが、陰陽塾に入塾してからは呪術の習得に集中するという名目で、ようやく習い事の時間を減らしてもらうことができた。
 そういう意味で今は『時間に余裕がある』と言える。
 ふいに京子の中に茶目っ気がわきあがる。

「えい」
 京子のあやつる簡易式が秋芳の簡易式の足を払い、ころばせる。

「む」
 すぐに起き上がらせ、お返しとばかりに背後に回り、机から落とそうと押しやる。

「甘いわよ」

 机際まで寄ったところで今度は京子の式が身を入れ替えようとするのを、秋芳の式がそうはさせじと妨害する。

「――――っ!」
「――――っ!」

 二人の式はまるで動き
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