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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
入塾
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 白亜の塔。
 そんな言葉がよく似合う、大きなビルが目の前にそびえ立っている。

「でっか! 他の建物が小さく見えるよ」
「そうだな。陰陽塾とかいうからどんな古色蒼然とした学舎かと思ったら、こんなでかいハイカラな建物だとは思わなかったぜ」

 東京渋谷区某所。陰陽塾を前にしてそんな言葉を交わすのは秋芳(あきよし)と笑狸(えみり)の二人だ。
 僧侶のように頭を剃りあげた短身痩躯の青年、賀茂秋芳。先祖代々呪禁師を生業にしていた連(むらじ)家の者だが、その類まれな呪力を買われ、賀茂家の養子となり、賀茂のために働いている。
 少年のように凛々しい顔に少女のような愛嬌のある笑みを浮かべている笑狸。男の子のような女の子のような。曖昧な、むじなのごとき容姿をしている。
 秋芳の使役式であり、その正体は化け狸だ。

「ここって去年できたばかりの新塾舎で、中身も最新設備がたくさんあるって案内書に書いてあったよね」
「屋上の祭壇に地下の呪練場。他にも設備が充実していて、いたれりつくせりの学び舎みたいだな」

 土御門夜光の転生者と思われる土御門夏目。彼を監視し、場合によっては身柄を確保するため、夏目の通うこの陰陽塾に今日から通うことになった。
 そのついでに入塾期間中に甲種呪術の資格も取り、無資格の陰陽師稼業ともおさらばする予定だ。
 玄関で二体の狛犬の出迎えを受ける。

「あ、これが昨日言ってた機甲式の…」
『さよう』
『我らは高等人造式、アルファとオメガ』
『開塾以来その番を司っておる』
『己が名を名乗るがよい』
「賀茂秋芳」
「笑狸!」
『賀茂秋芳とその使役式、笑狸。…よろしい。声紋と霊気を確認・登録した』
『賀茂秋芳。昨日は我が陰陽塾の生徒が世話になった。礼を言う』
『我らは汝らを歓迎する』
『学友と切磋琢磨し、良き陰陽師となるべく精進するがよい』
『まずは最上階。塾長室へ向かうがよい』

 狛犬たちの間を通り抜け、進むと、広々としたホールに出る。
 正面にある鉄骨造りの大時計が威容を誇り、所々に植えられた竹が清冽な雰囲気を醸し出している。
 竹は古来より縁起の良い植物とされ、そのまっすぐに伸びる姿から高潔さや清浄。人生の学びや成長の象徴とされた。学び舎にはピッタリの植物といえる。

「……ぷぷぷ、アルファとオメガだってさ。狛犬なのに、和風なのに。素直に阿吽とか名乗ればいいのに」
「まぁ『急急如律令』を『order』なんて読ませる、汎式陰陽術全盛の世の中だからな」
 言葉に宿る霊的な力を言霊(言魂)という。
 発した言葉どおりの結果を、現実に現す力があるとされた。
 言葉そのものに意味があり、言葉を(しゅ)として用い、その霊的な力を利用し言葉で対象を縛るのもまた陰陽術の一つだ。
 良い
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