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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
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酒がある。節句の菊酒や屠蘇くらいなら自分でもこしらえることができるが、もっとレア物。アムリタ、ソーマ、ネクタル、
天甜酒
(
あまのたむざけ
)
に
八塩折之酒
(
やしおりのさけ
)
といったの霊酒の類はいまだに飲んだことがない。中でも一番飲んでみたいのが……」
「飲んでみたいのが?」
「神便鬼毒酒」
ブフーッ!
「わ、きたねーな。なにやってんだよ」
口にふくんだ酒を盛大に吹き出してむせかえる冬児。
「ケホッ、ケホッ。……い、いや、ちょっと変なとこに入っただけだ。わりぃな」
「そういえばこのチャプスイにも呪術じみた逸話があったな。いわば真の李鴻章雜碎とでも呼ぶべきか――」
食事というのはたんなる栄養摂取の一過程ではない。
動植物を殺し、命を奪い、その魂を吸収する一種の儀式。呪術の面を持つ。
料理の素材である動物や植物に細胞レベルで残留した魂と、調理する人間から発散されて食べ物にうつる気が消化器官を通じて食事する人間の魂に吸収される。
同様の現象は逆方向にも起こる。
美味しそうな食べ物が目の前に並ぶ。それを見てうまそう、食べたい、などと思う。
そう食欲をもよおした人間の気は欲望とともに対象物に投影される。
その余韻が残留するからこそ、残り物料理には独特の味が生まれる――。
「――そのように実際の食卓に上がり、人の目や箸にさらされた食べ物には人間の五味とは異なる味わいが生まれるそうだ。これこそ李鴻章が実際に口にした宴会料理の残り物で作ったチャプスイで、稀代の食通たちの中にはこの魂の味つけがわかる者がいるとか。この真・李鴻章雜碎の作り方は犬神作成といった巫蠱の術理にも通じるものがあるから、陰陽師としてはとても興味深いものが、……どうしたんだ春虎、なんか顔が死んでるぞ」
憮然とした表情で固まっている春虎。
「あー、ダメダメ。こいつ呪術とかそっち方面は素人同然だから」
「そうなのか?」
「あ、ああ。おれつい最近まで普通の学生してたんだよ――」
あれこれと長話をするうちにできあがったチャプスイは寮生たちにはおおむね好評で、残るようなことはなかった。
夜。
陰陽塾男子寮の一室。
急ごしらえで部屋の隅に作った祭壇の前で札に文字をしたためる秋芳と、ベッドの上で携帯ゲーム機をいじる笑狸の姿があった。他の寮生との相部屋になることも考えていたが、部屋の数に余裕があるらしく、こうして二人で一部屋がもらえたのだ。
女子寮担当の笑狸のほうは笑狸のほうで首尾よくことを収めたらしい。
秋芳はなにをしているのか?
紙銭
(
しせん
)
を作っている。
紙銭とは道教でもちいる供物で、神仙に祈願したり護符を作る時に燃やす「あの世」で使えるお金で。この紙銭は燃やすことで天界や冥界に送金さ
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