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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
序章
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だな、そっくりじゃないか」
「しっかり視てたからね。化け狸たる者、つねに観察眼を養ってなくちゃ」

 見た目もいかつい大鬼の口から、少女のような柔らかな声――秋芳いわく「ねこじゃらしのような」声――が出されるのはかなり違和感がある。
 鬼に化けた笑狸の手でくさかんむりが書かれ『化』が『花』の字になると、あたりに満ちていた瘴気がほとんど消え去った。

「あとは改めて新しい額を用意させれば完璧だな。よし、俺たちの仕事はここまでだ。宗家に連絡して帰るとしよう」
「うん。じゃあ、なんか食べて帰ろうよ」
「そうだな、まだ日が高いが仕事の後だ。一杯やって帰るか」
「お蕎麦がいいなぁ、たぬき蕎麦!」
「たぬきか・・・。そうだな、鬼退治した後だし、俺もたぬき蕎麦って気分だ」
「あれ、珍しい。いつも山かけやおろし蕎麦なのに。なんで鬼退治したからたぬきな気分なわけ?」
「京の狸(たぬき)谷山(たにさん)の叱怒(たぬ)鬼(き)不動明王を思い出したのさ」

 京都にある狸谷山(たぬきたにさん)不動院は平安時代に桓武天皇が京の鬼門の守護にと、鬼を叱り退ける力を持つ蒼{鬼不動明王を安置し、名に「たぬき」が入ることから狸そのものもまた霊獣として扱われているパワースポットである。

「あ、な〜るほど。ボクの親戚筋かぁ」

 西新宿五丁目某所。
 蕎麦屋で遅い昼食。早い晩酌をとる二人の姿があった。
 板わさと焼き味噌をつまみに日本酒をちびちび飲む秋芳。
 対して笑狸はというと、鴨焼き、玉子焼き、天ぷら、もつ煮といったサイドメニューをあらかたたいらげた後に、たぬき蕎麦とうどんの合盛りを腹に収め、デザートのみつまめを賞味しているところだ。
 あいかわらずよく食べる。やはり妖の胃袋は人とはちがうな。
 そんなことを考え、四合目の銚子に手を伸ばした秋芳の視界に一羽の折り鶴が飛び込んできた。 
 賀茂家がよく使う伝令用の式だ。

(まったく。電話もメールもあるってのに、無駄に格式ばって益体もない。そんなんだから土御門や倉持に良いとこ持っていかれちまうんだよ)

 もともと煩雑だった陰陽術を土御門夜光が改良をくわえ、あつかいやすく、かつ実戦的にしたものが帝式陰陽術。
 そこからさらに危険な要素を排し安全性を高めたものが、こんにち一般的に使われてい汎式陰陽術である。
 これらの陰陽術はインターネットや電子機器との親和性もあり、術や式神をデジタルデータ化してもちいることで、より安全・安易に万人が陰陽術を行使することが理論上は可能で、ウィッチクラフトという会社など、その開発に余念がない。
 あいにくと賀茂家はそちらの方面にうとく、一歩も二歩も差をつけられていると言わざるをえない。
忌々しげに開封の呪文を唱え、伝言を聞く。

「………………」

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