希望と影
[8]前話
次の日、仕事に身が入らずぼんやりしていた。
昨日の事が、頭から離れなかった。
そして、ずっと忘れていた…振りをしていた、その思いは強くなった。
“実の親に、会いたい”
会ってはいけないと、思っていた。
私を捨てたのだから、会いに行っても…無駄だと。
でも、それでもいい。
それでもいいから
一目だけでもいいから
私の…本当の、生みの親に会いたい。
学校を終えると、真っ直ぐにある場所へ向かった。
私が養子に行くまで暮らしていた施設『hope(希望)』。
親に捨てられたり、ネグレクト(育児放棄)、虐待…様々な理由で子供達が引き取られる、所謂…孤児院のようでもある施設。
忙しくて行く暇が無かったこともあり、数年ぶりに顔を出すからか少し恥ずかしい。
hopeのドアを開けると、偶然にも私がお世話になった施設長(女性)が居た。
施設長は私だと気づくと大層驚き、慌てて駆け寄って来てくれた。
そして、頬で顔を挟まれ、苦しいほどに抱きしめられて。
気づけば、施設長は涙を拭っていた。
「ああ、ミリアム…久しぶりね、元気そうで何よりよ」
そう話しながら、私を椅子に座らせて、紅茶を淹れてくれた。
紅茶を私に渡すと、施設長先生は椅子に腰掛けた。
「施設長先生こそ、お元気そうで何よりだわ」
私がそう笑えば、施設長先生も笑って。
「それでミリアム、何か用事なの?」
施設長先生の言葉に、私は笑って頷いた。
「ええ、私も良い年になったから…そろそろ、生みの親の事を…知りたいと思ったのよ」
その言葉を聞いた施設長先生は表情を曇らせた。
「申し訳ないけれど…私からは、何も言えないわ」
施設長先生はそう言うと、そそくさと用事を思い出したと立ち去った。
私は何も言えず…施設を後にした。
そして帰宅し、ベッドに倒れこんで頭を抱えた。
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