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世界をめぐる、銀白の翼
第六章 Perfect Breaker
Another/前回の物語
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男は集落にたどり着いた。
とはいっても、すでにほとんどか崩れてしまっている。


もうここに人はいないらしい。
半分遺跡となっている集落だ。

住居も洞窟に住んでいるというだけの簡易なもの。



そうして洞窟内に何かないかと探していると。


そこで、男は見た。

掠れてしまいそうな記憶から、それを思い出す。


そうだ。
確かこれは、『誰か』が見学に行くとか言ってた絵だ。

これを誰かが、見に行くと言っていた。


ならば、男がやることは一つだ。



枝や石を使って、必死になって削り始める。
皮膚が裂け、血が垂れても、男は諦めずに削り続けた。


元々絵心のない男にとって、それは大変な仕事だった。
簡単な棒人間を描くしかない。

しかし、男はやり遂げた。



やっとの思いでそれを書き上げ、そこを後にしていく。


そして、また旅に出た。
「自分」があの近くで死に、発見されるのは避けたい。




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長い時間が経った。


男は、最初に現れたのと似たような荒野をさまよっていた。




あれから、人間には出会った。
しかし、男を受け入れてくれる場所はどこにもなかった。

表面上は受け入れていても、やはり彼はその場にとどまれない。

そうして集落を転々とし、男はついに力尽きた。
食料の豊富な土地ではないのか、男の体力も、命も、限界だった。


バタリ、などという、体重を感じさせる倒れ方はしなかった。



パサリと

乾いた大地にふさわしい音とともに、男は倒れた。



そして、目を閉じる。


あの男は、自分で完成してしまった。
完結してしまった。


だが、人間の凄さというのは、完全になることではない。
人間―――否、生命というものの素晴らしさは、後世に伝えることができる、未来に繋げていくことができることだ。



あの男は、確かに強力だ。
だが、その「完全」は停滞と同義。

「進展」していく者に、いずれ追い詰められていくのだ。




男の意識が消える。
心臓が、停止して。


死んだ。



荒野に、ただ一人の男の身体だけが残り



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「―――――――」

男の意識は、黒い空間にいた。
足元を淡い光が照らす、真っ暗な空間。

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