ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
1章 すべての始まり
2話 演説
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「こんなのありえへん…あの茅場ってやつの全部戯言やろ…そうや、絶対そうや!」
こんなものが真実だと信じたくなかった。もし、これが現実だと認めてしまったら、それがまた現実になってしまうような気がしてならなかった。いまなら、全面否定さえすればこれが夢になるような気さえもしてくる。
これは夢だ、と、もう一度そう自分に言い聞かせた時だった。唐突に、
「皆さん、いったん落ち着いて、私の話を聞いてください!」
自分の思うままに叫び続ける声の中に混じって、その雑音を突き抜けるような、張りのある美声が彼の耳に入った。その声が広間に響いた瞬間、一瞬にしてあたりが静けさに包まれる。その声には、人々の怒号をやめさせる、不思議な力があるようだった。
いったい誰があの声を発したのか…と皆があたりを見回し始めたとき、広間にある演説台のような場所に一人の少女が昇るのが見えた。キバオウの位置からでは、身長はよくわからない。しかし、その容姿には目を見張るものがある。いや、そんな言葉では生ぬるい。正直、一瞬彼女のアバターだけSAO配信直後のキャラメイクされたものと思ってしまった。つまり、まるで人の手で作られた物のように、完璧な造形美を誇ってたのだ。誰もが異様なほどに美しい少女にくぎ付けだった。彼女のダークブラウンの腰ほどまで届きそうな髪が、仮想世界の風に舞うその様子は、キバオウが見てきたどんな風景よりも美しいと思えた。
広場にいる約一万人の人々が彼女にくぎ付けになっているのは、彼女の容姿だけではない。もしかしたら、彼女はGMかもしれない、先ほどの茅場昌彦の言葉は全部嘘だと言ってくれるかもしれない、そして、自分たちは安全に現実世界に戻れるかもしれないという、淡い希望の光のほうが多いくらいだろう。
少女は、広間が十分に静かになり、自分に注目が集まったと判断したからか、いよいよ話を始めた。
「皆さん、確かに今とても混乱しているお気持ちはよくわかります。いきなり現実世界へ帰れず、しかもデスゲームになってしまったということがまだ受け入れられないのも、当然の反応でしょう。でも、今はいったん落ち着いてください」
凛とした彼女の声は、広間の隅々にまで響き渡っていた。と同時に、人々の希望の光が陰っていくのがキバオウにもわかった。今の彼女の言動を聞く限り、彼女はGMではない。そして同時に、彼女にはこの世界を変える力がないということが。そんな観衆の陰りには目もくれずに、少女は言葉を続ける。
「先ほどの茅場昌彦のチュートリアルは信じられないというものばかりだったでしょう。ゲームなのにゲームオーバーになったら現実世界からも退場するなど、戯言だと思われるかもしれません。しかし、私は彼の言っていることはすべて本当のこ
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