水虎
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上に、俺に危険がないのであれば、俺に『水虎』の事を教える必要はなかったはずだ。ひょっとしたら。
これまでにも、俺の気が付かない怪異を、奉は黙ってやり過ごしていたのだろうか。
意地悪をされたことよりも、俺はそっちの方が気になった。きじとらさんなら知っているかもしれないが、何故かそれを聞きだす気にはなれない。…奉が話す必要がないと思ったのなら、それでいい。
「結貴が元のボッチに戻ればいいのにと、しょっちゅう呟いていらっしゃいます」
「いつ俺がボッチだったよ!!ていうか一時的にボッチポジションに堕ちるのは全部あいつのせいだろ!?むしろ今!!今俺は本来のリア充な俺に戻ってんの!!ていうか祟り神が俺のボッチ復活を願うのやめてくれない!?」
「そのように申し伝えます」
「…ごめん、やめて下さい。今のナシ」
―――あっぶねぇ、危うくあの堕落神を見直しかけていた。
遠くからパンプスで駆ける足音が聞こえてきた。それは病室の前で止まり、小さく息を切らしながらドアを押し開ける。
「結貴さん!…倒れたって…」
駅からずっと走って来たのだろう。静流は苦しそうに肩を上下させて、俺を見上げた。吐く息が白くない。もう春だな…と俺は場違いな感想を覚えた。
「走ると…暑い…もう春ですね…」
ふらふらしながら近づいて来た静流の腕を取り、引き寄せた。知らないシャンプーの匂いが鼻をくすぐった。…済まない、奉。俺は誤解をしていた。お前はやはり、見直されるべき男だ…。病院の一室に彼女と二人きり、これはもう、何か進展がなければ逆におかしい、そんなシチュエーションだろう。…少しだけ、縁ちゃんの事が頭をよぎったが。
「ただの貧血だよ。…ねぇ、このあと」
「ゆーうーきーく―――ん!!おみまいに、きたのです!!」
ばほばほばほ、という激しくも不思議な足音と共にドアに衝撃が走った。俺が静流の腰に手を回したまま硬直していると、ゴガチャっみたいな轟音と共にドアが開け放たれ、小梅が弾丸のように飛び込んで来た。
「あ―――!!出たなメガネせいじん!!まだこりないのか、ゆうきお兄ちゃんは、小梅とけっこんするんです!!」
小梅の頭突きを脇腹に食らい「あふぅ」みたいな声を出して吹っ飛ぶ静流。彼女が俺の家に遊びに来るようになって以来、小梅は静流を『メガネせいじん』と呼び敵対視しているのだ。…奉も眼鏡なんだが、そっちはメガネせいじんじゃないのか。
「あらあらあら…ごめんねぇ?うちの子が邪魔しちゃった?…うっふふふ、歴代彼女で一番カワイイじゃん」
少し遅れて姉貴がニヤニヤしながら入って来た。
「――まーだ二人目だけどねー!!」
「うるせぇな何しに来たんだよ!一人で帰るよ!!」
「私は…なんでいつも嫌われるのでしょうか…」
執拗に静流の脇腹に頭突きをいれる小梅。
半泣きで逃
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