水虎
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とした知り合いだ、別にそんな親しい関係では」
「僕の秘密の嗜好を知っているのは君と奉君だけなのに…?」
「玉群も!?」
今や俺と今泉の距離はゆうに1メートルは開いている。相手が飛びかかって来てもギリ逃げ切れる距離である。
「……分かるよな、一方的に巻き込まれただけなんだ俺は」
「分かってるよ。お前って昔から巻き込まれ型じゃん…むしろ、だからかな。ゴメン!明日学校でな!」
そう云って後ろ手にドアを開けると、今泉は俺達を置いて走って逃げた。
「更なる巻き込まれ防止か。周到じゃねぇか」
俺を置いて躊躇なく逃げた今泉の、忙しない靴音が響いてきた。俺と変態二人きりになった霊安室はいやに静かで、時折少し先のボイラー室から聞こえてくる唸り声にも似た機械音だけが唯一の物音だ。
明らかにやばそうな人物からは私情を排してキッパリ逃げる…なるほど、それがリア充メソッドか。頭悪いから嫌いな奴とは関わらない、というのはあながち嘘じゃない。あれは本能で嗅ぎ分けて逃げてんだ。本当にそれは正しい。しょっちゅう要らん騒動に巻き込まれる俺は、この能力が喉から手が出る程欲しい。
「病理的には原因はさっぱり思いつかないけど、ほんと、どういうことだろうねこれ」
変態センセイは、何もなかったように遺体を検める。
「吸血動物に襲われたとしても、こんなにきれいに血が抜けるなんてことはないよ。空っぽの血管に蝋を流し込んだらそのまま蝋人形にできそうだねぇ…ふふ…」
「うっわもう一挙手一投足に加えて発言までいちいち気持ち悪いなこの人。俺もう帰るわ」
今泉を見習い、早々に距離を置こうとドアに手を掛けると、そのドアを軽く引く者が居る。ご遺族がいらしたのか、と申し訳ない気分で会釈をしながらドアを押す。
「………よう」
薄暗がりに光る、煙色の眼鏡。色あせた黒の羽織。
俺の巻き込まれ体質の原体験というか諸悪の根源が、ドアの向こうに突っ立っていた。
「こりゃ、また……困ったねぇ」
遺体をひと目見るなり、奉は険しい顔をして顎に手を当てた。
「…おい変態センセイ、何でこいつまで呼んだんだ。関係ないだろう」
「さっき云っただろう。病理的な原因が分からないんだから『その道』の専門家の意見を聞きたいじゃない」
「拝み屋ならちゃんと金取って専門的に視てくれる人がいるだろ」
「茂呂さんなら君達が殺しちゃったじゃない」
そう云って薬袋はぷぅと頬を膨らませる。…あの猫鬼使いの爺さんは茂呂というのか。俺は心の中でひっそり合掌する。同じ巻き込まれ体質として、他人事とは思えない。そのうち、俺も同じように理不尽な最期を迎えるかもしれないのだ。
「あれ以来、地元の拝み屋さん達からは門前払いだよ。あんなえげつない殺し方してくれちゃって」
「俺の呪い返しは、呪いをかけた相手の
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