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霊群の杜
水虎
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校内で再び、死者が出た。



草間の奇妙な死は、俺たちの目の前で起こった。
最近たまにつるむようになった小学校の同級生、今泉の友達として紹介された。ちょっとした世間話なら出来そうだが、根っこの部分は俺とは合わないな、と互いに距離を置いている、そんな程度の知り合いだった。正直、葬式にも行くべきなのか迷っているくらいだ。…正直、行きたくない。別に嫌いだったとかそういうことじゃない。


俺と今泉の目の前で、草間は奇妙な死に方をしたのだ。


その日俺たちは、地元の寒中水泳大会を冷やかしに行った。草間が参加するらしい、と今泉が聞きつけ、男ばかり引き連れて野太い声援を送ろうとしたのだ。ただ流石に『くだらない』『時間の無駄』という意見が多く、最終的には俺と今泉と、知らない奴2〜3人位にまで減った。…今泉とつるむようになって分かった事がある。
俺は酷く、人見知りだったのだ。
今泉は基本的に壁を作らず、誰とでも楽しくつるむ。その感じが軽薄な男と勘違いされるのか、嫌っている奴も割と居るが、本人はさほど気にしていないようだ。
『俺バカだから、頭の中は好きな事や好きな人達のことで一杯なの。嫌いな奴の為に使うキャパ残ってないの』
というのが奴の言い分だ。
心底、その性質が羨ましい。
なら俺はいつも井戸の底で蛇やタガメの事で頭を一杯にしてびくびく震える蛙のようだ。そんな事を云うと、今泉は笑った。
「お前さ、今度の寒中水泳、もし来る奴がいっぱいだったら断るつもりだったろ」
素直に頷く。
「俺、お前のそういうとこ好き」
そう云って今泉はまた笑う。こいつは小学生の頃からそうだ。何の衒いもなく『好き』だという。俺など、まだ静流にすら云えていないというのに。
やがて寒中水泳が始まった。準備運動の段階で今泉は素早く草間を見つけ、わざと野太い声援を送って草間に厭そうな、どこか面映ゆそうな顔をされていた。俺は正直、何をどう楽しめばいいのかさっぱり分からないが分からないなりに『水着のねぇちゃん居ないかな』などと別の目的を探して無理矢理楽しんでいた。
そして参加者達が各々、海水の冷たさに悲鳴を上げながら海に飛び込んでいったその刹那、それは起きた。
「うははは、草間、寒さで動けなくなってら」
海に腰まで漬かってまんじりともしない草間を指さしながら、また今泉が笑う。…俺はこの光景に酷い違和感を覚え、眉をしかめた。なんというか、不謹慎な感じがしたのだ。
まるで友人の棺の横で『うはは死んでら、死んでら!』と嬉しそうに大笑いする男を見ているような。
「ははは…動かないなおい」
俺の方に視線を動かした今泉が、妙な顔をした。
「…どした?すげぇ顔してるぞ」
はっとして自分の頬をさすった。違和感が顔に出てしまったようだ。

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