番外編 星雲特警メイセルド
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も意識すらない。彼女の味方など、自分以外にはどこにもいないのだ。
彼は焦燥を露わにして、アリエッタを探して飛び回る。――シルディアス星人に追われていた子供を見つけたのは、その最中だった。
幼い金髪の少年は、生まれて間もない赤子を抱え、血塗れになりながら逃げ惑っている。赤子の薄い金色の髪を見るに、恐らくは血を分けた弟なのだろう。
そんな懸命に弟を守ろうとしている彼を、シルディアス星人達はじわじわといたぶっていた。
――アリエッタを守れるのは、意志を持った機竜である自分しかいない。1分1秒の遅れが、彼女の生死を分ける。
それを理解していながら、グラムは弾かれるように翔び――シルディアス星人達に襲い掛かっていた。
「奴ら」によって「牧場」にされた故郷に、どことなく似ているこの街で暮らしていたのであろう、この兄弟を……グラムはどうしても、放っては置けなかったのである。だが、兄の方はすでに手遅れであった。
程なくして力尽きた金髪の少年――「ヘイデリオン」の骸から、泣き?る赤子を預かったグラムは新手の接近を感知すると、咄嗟に近場の樽に赤子を隠し、オアシスの下に沈めた。
ここまですれば、さすがにシルディアス星人も気づかないだろう。その可能性に賭けた彼は、自分を包囲してきた新手に、敢然と挑もうとしていた。
――遥か上空から急降下し、加勢に駆けつけた星雲特警との邂逅を果たしたのは、その直後である。エメラルドの外骨格を纏う彼は、自分に指示を送りながら紫色の光刃剣を振るい、瞬く間に新手を斬り捨ててしまった。
そんな彼に、グラムは暫し唖然としていたのである。まさか星雲特警の中に、機竜を守ろうとする変わり者がいたとは思わなかったのだ。
そしてグラムは、そんな彼に赤子を託すことに決めたのだ。これほど情に厚い星雲特警なら、この子を守ってくれるかも知れないと。
彼はオアシスから樽を引っ張り上げると、その中に隠していた赤子を星雲特警に預け、すぐさま飛び去ってしまった。
――あの星雲特警は、自分に「意志」があることに勘づいていた。あまり近くにいると、自分のことを上に報告される恐れがある。それでなくとも、今はアリエッタの安否が気掛かりなのだ。赤子を託した今、もう彼の近くに立つ理由もない。
そういった事情から、グラムは翡翠の星雲特警を一瞥しつつ――疾風のように姿を消した。
……のだが。心のどこかでは、名残惜しくもあった。
自分達を単なる兵器とは見做さない。そんな奇特な星雲特警が、彼にとってはどこか微笑ましかったのである。
しかし。
彼ら2人が生きて再会することは、永遠になかった。
最愛の幼馴染を、この戦いによる傷で喪い。自分自身も廃棄されたグラムは――「最悪の機竜
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ