EX回:第19話(改2)<美保計画>
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じなかった。
「本省に艦娘の制服組が居るという噂は私も知っていた。だが、まさかお前が、その張本人だったとはな」
その言葉に私もハッとした。
(そういえば先日、美保に視察に来た、あの青年将校も同じことをチラッと言っていたな)
だが、それを聞いても私自身が信じられなかった。遠い中央でのことだから雲の上の話かと思っていたのだ。
先ほどより、かなり穏和な表情になった武蔵様は言う。
「その小さいのが、お前の娘か。そして今、その子だけが美保にいるわけだな」
その言葉に参謀が応える。
「そうだ。決して艦娘を軽視する訳ではないが、もし彼女たちが量産化されれば、この娘を戦乱に巻き込まずに済むかも知れない。私はただ、その想いを胸に単身、中央で開発を続けてきたのだ」
「なるほど」
武蔵様は長い髪の毛をいじっている。
寛代の顔を見つめながら参謀は続ける。
「それもやっと目処が立ってきた。だからオリジナルの艦娘を集中させる『美保計画』も私が中心的に押し進めたのだ」
(えぇ? そうだったのか)
これは初耳だった。いや機密事項ではないのか?
少し焦った私を尻目に技術参謀は話を続ける。
「いよいよ量産化も最終段階に入り、その実証実験を、このブルネイで行うつもりだった。しかし、ここに来る途中で謎の嵐に巻き込まれた。そして気がついたら、ここに居たわけだ」
「ふふん」
武蔵様は顎に手を当ててうなづいている。
寛代の髪の毛を撫でながら参謀は言った。
「ここが未来と仮定してだが……私の時代では艦娘の量産化もまだ不安定だ。特に魂の定着が難しい。だが、ここでは既に実用化されている時代ではないか!」
武蔵様意外の面々は、その気迫に押されるようにして無言だ。
彼女は続ける。
「だから、この技術を何とか過去に持って帰ることができれば量産化も完成して人類の深海棲艦への強力な切り札になる」
「それで、この記者と技師と一緒に調べていたのか」
武蔵様は眼光鋭く他の二人を見つめていた。
美保の艦娘たちは、武蔵様に見詰められるたびにビクついている……可哀想に。まるで蛇に睨まれたカエルだな。
傍で見ている私の頭の中は理解を超越して大混乱の真っ只中だ。それでも整理すると。
1)美保鎮守府は艦娘量産化のため
2)技術参謀の寛代を護りたい一念
……で、計画が進められていたのか。
技術参謀は補足する。
「もちろん、私の娘の為と言うのは動機の、ごく一部に過ぎない。わが国や世界の防衛のためにも艦娘の量産化は不可欠だ」
武蔵様は、黙って聞いていた。全員、無言だった。
参謀は改めて寛代を抱き寄せた。
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