第1幕
ep1 閉幕前夜
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ユニオン製ヴァージニア級巡洋艦の格納庫で、アリー・アル・サーシェスはガンダムスローネツヴァイのコクピットを降りた。たった今、機体を艦に収容したのだ。
軌道エレベーターを出発する本艦隊は、これからソレスタルビーイング掃討任務『フォーリンエンジェルス』の作戦行動に入る。彼はアレハンドロ・コーナーの依頼の成り行きで鹵獲したこの機体と共に、フランス外人騎兵連隊としてこの任務に潜り込んだ。理由は無論、ガンダムの力を戦争で味わうためである。
格納庫が見える一室に入り、ベンチに腰をつける。サーシェスはやや破損したスローネツヴァイに目を移し、小さく舌打ちした。
「あのクルジスのガキ……。どんな手品使いやがったんだ」
突如現れたガンダムエクシアとの交戦で、サーシェスは敵の猛攻を食らった。敵の動きが急に加速し、予測が連続して外れたのだ。その結果、彼はなす術がなくなり撤退を余儀なくした。
だが、苛立つばかりではない。機体は予備パーツで補修を受けられるとのことだった。
依頼先の手厚い保障にサーシェスはつい口元を緩め、次の戦闘に気を動かされていた。
そのとき、部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。AEUの軍服を着た、赤い髪の男だった。彼は部屋をきょろきょろ見回しながら首を傾げる。
「あれ、おっかしいなー。大佐がいないぞ。大佐ぁー?」
ーーこの男、確か……。
顔に見覚えがあった。スクランブル出撃の模擬戦で全勝したパイロットだった。それからーー。
赤髪の男はようやく出入り口の手前にいたサーシェスに気づいたのか、「うおっ」と声を上げた。
サーシェスはこの場では外人部隊のゲイリー・ビアッジ少尉となっている。彼は立ち上がり、男に向かって敬礼した。
「フランス第4独立外人騎兵連隊のゲイリー・ビアッジ少尉です」
するとその男は返礼ではなく、自身を親指で示して声高々に名乗った。
「AEUのエース、パトリック・コーラサワーだ!知らないとは言わせないぜ!」
「存じています。ガンダムに初めて武力介入された……」
「そうじゃない!いや、確かにそうなんだけど」
数秒前の勢いは一気に失せ、パトリックは口ごもる。が、格納庫に佇むガンダムを見て「あっ!」と声を上げた。
「なあ、あれガンダムだよな?誰のだよ?ひょっとして俺?」
「いえ、あれは私の機体です」
「は?でもあんた、AEU所属だろ?」
確かに、サーシェスは都合上AEUの軍服を着ている。また、階級も同列のため、完全に同僚である。
サーシェスは綺麗に剃った顎に手を当てながら苦笑した。
「ええ、その通りですが企業秘密ってことで……」
「いいや、そんな逃げ道はない
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