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歌集「春雪花」
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 冬まとふ

  陰りし空に

   からす鳴き

 呼ぶも来らぬ

    君ぞ恋しき



 冬を纏うような雲の覆う寒々しい空…。

 見れば…電線に烏が一羽留まり、寂しげに鳴いている…。

 他の鳥は群れを成して飛んでいると言うのに…烏は鳴けども一羽のまま…。

 私と似ている…そんな気がした…。


 彼の名前を呼んでも…彼は絶対に来ないのだから…。

 故に…恋しくて堪らないのだ…。



 月の影

  寒み閨にそ

   差しぬれば

 うつすは虚し

    叶わぬ恋かな



 しんと静まり返る真夜中の部屋に、淡い月明かりが差し込む…。

 あの暑さが幻であったかのような…一人寝の寒々しい部屋では、いかな淡い月明かりだろうとも眩しく…そして虚しく感じてしまう…。


 光に映るのはいつも彼の朧気な姿…決して叶わぬ恋なのだから…。




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