巻ノ百十 対面その十一
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「その時は」
「伊達家は何かと警戒されていますし」
「太閤様の時から」
「そして幕府もですか」
「伊達家を」
「そうらしい、しかし伊達家はな」
この家はというと。
「この難も乗り越えるであろう」
「伊達殿ならですか」
「そうされますか」
「疑われても」
「幕府に潰されようとしても」
「そうじゃ、あの御仁は切れ者じゃ」
ただ野心があるだけでなく、というのだ。
「そうした難もじゃ」
「逃れて」
「そしてことなきを得る」
「そうされますか」
「大御所殿としては取り潰したいところじゃ」
その伊達家をだ、そしてこれは幕府の考えでもある、
「どうしてもな、しかしな」
「それでもですな」
「伊達殿は逃れ」
「そして越後少将殿も」
「あの方も」
「そうなるであろうな、しかし少将殿はな」
彼はというと。
「どうもな」
「あの勘気と頑固さが仇になりますか」
「どうしても」
「そうなりますか」
「そうであろう、伊達殿の娘婿というだけでなくな」
どうしてもというのだ。
「あの方のご気質が問題になりな」
「それが仇となり」
「ご自身を追い詰める」
「そうなってしまいますか」
「どうしてもな、それでじゃが」
また言うのだった。
「天下は暫く大坂のことでなくな」
「伊達殿のことで」
「揉めまするか」
「そして大久保殿でもな」
彼のことでもというのだ。
「そうなろう、ではな」
「はい、それでは」
「暫くは見ていきまするか」
「この天下を動きを」
「時折この山から出て」
「そうしていようぞ。しかし戦にはならずとも」
この政宗が絡むそれはとだ、幸村は難しい顔になりそのうえで話した。
「ことと次第によっては嫌な話になるやもな」
「何かとですか」
「そうした話にもなりますか」
「そうやも知れぬな」
こう言うのだった、そしてだった。
幸村はその夜星を見た、そのうえであらためて十勇士達に言った。
「凶兆が出ておった」
「左様ですか」
「ではこの度の件は」
「やはり」
「嫌なことになりそうじゃな」
こう言うのだった、そのうえで天下のことを案じるのだった。せめて僅かでも血が少なくて済む様に。
巻ノ百十 完
2017・6・8
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