巻ノ百十 対面その九
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「よいな」
「わかり申しが」
「さすれば」
「その様に」
「ではな」
こう言うだけだった、だがそれは秀頼のことだけで大名達を下がらせるとだ。家康はこう傍の者達に問うた。
「どう思うか」
「伊達殿ですな」
「そして六男様ですな」
「うむ」
まさにその彼等のことだった、ここで問うたのは。
「どう思うか」
「目だったところはないですが」
「六男様も今は穏やかで」
「何も言われる」
「今は穏やかですが」
「うむ、しかしな」
それでもと言うのだった。
「二人共じゃ」
「大久保殿とどうなのか」
「まだわかりませぬな」
「特に六男様が」
「左様ですな」
「あ奴はわかりやすい」
忠輝はというのだ。
「すぐに感情が出る」
「表に」
「そうですな」
「とかくご気質の激しい方で」
「それ故に」
「そうじゃ、どうもそれを見るとな」
隠し事の苦手な忠輝はというのだ。
「わしの前に出てもじゃ」
「何も言われませぬが」
「それでもですな」
「目はお強いままで」
「疚しいところは見せられぬ」
「それではですな」
「特にですな」
忠輝はというのだ。
「関わっておられぬ」
「そうですか」
「少なくとも存じておられぬ」
「そうじゃ、しかしな」
忠輝はそうであってもというのだ。
「一番厄介なのはな」
「伊達殿ですな」
「どう考えても天下を諦めておられませぬから」
「今も仙台で虎視眈々としておられます」
「油断のならぬ方です」
「そうじゃ、大久保家とあの者が切支丹をつないで関わっておってじゃ」
そして自身の娘婿である忠輝を擁立し天下を狙うならというのだ。
「あの者こそをな」
「討たれますか」
「まずは」
「そうする、今天下で最も危うい者かも知れぬ」
こうまでだ、家康は政宗を危険な者だと言うのだ。
「家臣も揃っておるしな」
「ですな、片倉殿といい従弟殿といい」
「そして他にも多くの優れた家臣の方がおられます」
「戦もよくご存知で政にも秀でた」
「そうした方々です」
「油断出来ぬ、会津は押さえておるが」
かつて伊達家の本拠地だった、だが秀吉は政宗をあえて会津から仙台に追いやりその会津に蒲生氏郷を入れて警戒させたのだ。
そして家康もだ、その会津をというのだ。
「より堅固な城にしやがてはな」
「伊達家の備えとしてですな」
「より会津の城を堅固にし」
「そして確かな方に入ってもらう」
「そうしていくのですな」
「そう考えておる、とかくあの者は油断ならぬ」
こう言うのだった。
「表では従っておるがな」
「その実は」
「何時牙を剥くかわからぬ」
「そうした方ですな」
「そうじゃ、大久保家は半蔵と伊賀者達に調べさせておるが」
切支丹の影
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ