巻ノ百十 対面その八
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「ではお願います」
「宜しく頼む」
秀頼も言ってきた、見れば相当に大柄で肥えた秀吉とは全く違う外見の持ち主であった。その彼も言ったのだ。
「これよりな」
「はい、では」
「都まで」
加藤と浅野が応えてだった、そのうえで秀頼を都まで案内した。こうしてだった。
秀頼は生まれてはじめて大坂城を出た、しかしその秀頼を見て大坂の者達はこんなことを言い合った。
「また大きな方じゃのう」
「大層な」
「でっぷりと肥えてもおられる」
「馬に乗られることに慣れておらぬな」
「そうじゃな」
「あれだけ肥えていて刀や槍を使えるか」
「どうなのじゃろうな」
それがわからないというのだ。
「どうもな」
「それが出来るか」
「戦の采配はご存知か」
「どうなのだろうな」
「お父上は立派であられたが」
「小柄で痩せておられてもな」
父秀吉はというのだ。
「見事な采配であられた」
「戦も無類にお強かった」
「しかし右大臣様はどうか」
「戦はお強いか」
「果たしてな」
「そこはどうなのじゃ」
はじめて見る秀頼にどうも武士らしさを感じなかった、だが家康は自身が上洛する中で秀頼が大坂を出たと聞いてだ。
満足してだ、共にいる大名達にこう言った。
「よいことじゃ」
「はい、右大臣殿がですな」
「大坂から出られたことは」
「このことは」
「そしてわしと会う」
まさにというのだ。
「それはな」
「左様ですな」
ここで言ったのは政宗だった、彼は確かな顔になってそのうえで家康に対して応えたのだ。
「加藤殿と浅野殿もです」
「よくな」
「説得して頂きました」
茶々をというのだ。
「どうもお袋殿が困りものなので」
「あの方があそこまで勝手な方とは」
今度は佐竹が言った。
「思いませんでしたが」
「確かに」
上杉景勝も言う。
「あれではどうも」
「うむ、それ以上はな」
家康は景勝が何を言うのかわかって止めた。
「よい」
「わかり申した」
「茶々殿については皆言いたいことはあろう」
家康もそれはわかっているというのだ。
「よくな、しかしな」
「それでもですな」
「ここは、ですな」
「言わぬことことじゃ、わしが上洛してな」
そうしてというのだ。
「右大臣殿と会うのだからな」
「はい、それでですな」
「大御所様としては」
「是非共」
「右大臣殿と話をする」
こういうのだった。
「出来るだけな」
「落ち着いて、ですな」
「ことを進める」
「そうしていくのですな」
「そうじゃ」
それだけだというのだ。
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