巻ノ百十 対面その七
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「だからな」
「では文も書かれ」
「そしてですか」
「そのうえで大坂に向かわれますか」
「そうされますか」
「その様にな」
加藤はすぐに文を幾つか書いた、そのうえで大坂を経ったが。
昌幸は幸村にだ、高野山に届きこちらに送られてきた文を渡して読ませてからこう言ったのだった。
「士は士を知るというがな」
「それがしにですか」
「そう言っておられる」
「あの方が」
「そうじゃ、お主は関白様にも言われたな」
「はい」
そうだとだ、幸村は父に答えた。
「そのこともあり」
「そしてじゃ」
「あの方からも」
「そしてな」
「他の方々にもですな」
「文を送られたとのことじゃ」
昌幸は幸村にこのことも話した、そしてその者達のことも話したが幸村は確かな顔で言った。
「その方々ならば」
「何かあればな」
「はい、助けられますな」
「加藤殿は余命幾許もない」
「花柳の病で」
このことは彼等も知っていた、真田の忍達は今も天下を巡っていてその天下のことを細かく知っているのだ。
「それで、ですな」
「あと少しでな」
「この世を去られますな」
「お拾様は上洛されるとのことでな」
「あの方と浅野殿がですな」
「供をされるが」
それで茶々を納得させるがというのだ。
「それでな」
「もう、ですな」
「お拾様の上洛が終われば」
まさにその時にというのだ。
「世を去られるであろう」
「そうした状況ですな」
「実は前田殿もな」
前田利長、彼もというのだ。
「その病でな」
「あの方もでしたな」
「そしてな」
さらに言う昌幸だった。
「片桐殿もじゃ」
「あの方もどうやら」
「聞いておろう」
「かなり重く」
「あと数年といったところじゃ」
そこまで病に侵されているというのだ。
「だからな」
「まさに余命幾許もですな」
「ない」
片桐、彼もまたというのだ。
「そして加藤殿もな」
「そうした状況なので」
「あの御仁の後に右大臣様をお護りするにはな」
「そう思われて」
「そうじゃ、ではな」
「はい」
幸村の返事は今はこれだけだった、そしてだった。
幸村はあらためて決意を固めた、だがこれは今は彼の心中に収めるだけであった。そのうえで天下の状況を見ていた。
加藤は浅野と共に大坂城に入りすぐに茶々と彼女の傍らにいる秀頼に挨拶をした。そのうえでだ。
二人でだ、茶々に対して言った。
「それではこれより」
「右大臣様のお供をさせて頂きます」
「わかりました」
茶々は今は表情を消して応えた。
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