アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
舞うは雪、流れるは雲A
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なかったが、生まれるであろう隙をついて片方は墜とそうと考えていた暁人だが、その目論みは早々に潰えた。
ヴィータが咄嗟の判断で床にハンマーを叩き付け、瓦礫を巻き上げて盾としたのだ。無論、全て防がれた訳では無いが、迂闊に近付く事も出来ず、費用対効果が釣り合わない結果になったのは確かだった。
「……甘く見過ぎていたか。」
内心に生じていた僅かな慢心を戒める暁人。そして、
「くそっ!メンドクセーこと………うわっ!?」
「ぐっ!?これでは……」
そして、一切の容赦も、手加減もせず、一気に決着をつける事に決めた。
暁人の攻撃は単純。氷の剣をひたすらに展開しては投射し続けているだけだ。魔力消費を抑える為に強度は最小限。しかし、その剣の鋭さと命中率が依存するのは、魔力量ではなく操作精度だ。
精密な魔力制御により、極限まで薄く、鋭く鍛えられた氷の刃が、数えるのも馬鹿らしい程の束になって襲いかかる。その一振り一振りがまるで別の生き物であるかの如く全く異なる軌道を描く。
最早暁人には、相手に何もさせる気は無かった。行動する隙を、選択の余地を、ただ淡々と奪い、潰し、封殺する。それが白峰暁人という魔導士の本来のスタイルだ。
相手を強制的に自身のフィールドに引きずり込み、戦術的に優位に立ち、リスクを極力減らし、時に強引に、時に柔軟に、あらゆる戦法をフレキシブルに組み上げる。神算鬼謀の白銀の皇帝。それこそが、アージェント式魔導士の在るべき姿であった。
だがしかし、相手は百戦錬磨の守護騎士達。この程度の苦境など、数えきれぬ程に越えてきた猛者達である。当然、このままでは終わる筈も無い。
「くっ……《シュランゲバイゼン》!」
連結剣へと姿を変えたレヴァンティンが、縦横から襲い来る刃を弾き飛ばす。暁人が短い舌打ちを漏らすのと、ヴィータがその間隙を縫って飛び出すのはほぼ同時。
「アイゼン!!」
グラーフアイゼンがカートリッジを吐き出し、その形状が変化する。柄のついたドリルの後部にブースターという見るからに物騒なそれを点火し、一瞬で間合いを詰めるヴィータ。
「これでも……喰らいやがれぇぇぇ!!」
「っ、ぐぉぉお!?」
凄まじいインパクトに弾き飛ばされつつも、どうにか中空へと威力を逸らした暁人。しかし、体勢を崩した暁人に、次なる一手を防ぐ手立ては無かった。
「ーー《飛竜一閃》!!」
焔を纏ったその一撃は、竜の尾の如く周囲を薙ぎ払い、暁人もモロに直撃を浴びた。
「ーーガッ!?」
ガードは出来ていない。並みの魔導士なら意識すら保てない一閃に弾き飛ばされ、暁人は雪原に叩き付けられる。
「っ……効いたぁ……あ?」
そこでは終わらない。既にヴィータが暁人の上空に移動し、
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