第四十二話 竜の羽衣
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が、マクシミリアンはカトレアの胸に抱きつくようにして寝ていた。
「マクシミリアンさま如何されたんですか? 夕食辺りから何か変ですよ?」
「ごめん、カトレア。この夜だけは、このままにしておいてくれないかな。明日になればいつもの僕に戻っているから」
14歳ながら見事なプロポーションのカトレアの胸の中でそう応えるだけだった。
マクシミリアンの異変。それはホームシックだった。
竜の羽衣に日本人の末裔、そして醤油ベースのヨシェナヴェと食べて、日本人だった前世をはっきりと思い出したからだ。
(カトレアの前だって言うのに情けない……ああもう、クソッタレ!)
胸の中で唸っていると、ふわりと何かがマクシミリアンの頭を撫でた。
「カトレア?」
「夫婦なんですから相談の一つもして欲しかったですけど。何があったのかは聞きません。マクシミリアンさまが眠るまで、こうやって頭を撫でてますね」
「ああ、カトレア。愛してる」
「わたしもです。ずっと前から愛していました」
カトレアの柔らかい手が、マクシミリアンの頭を撫でる度に、日本への恋しさと心の底から沸き上がる不安が和らいだ。
「マクシミリアンさま? 眠られましたか?」
「……」
1時間ほど頭を撫で続けていると、マクシミリアンはカトレアの胸の中で寝息を立てていた。
「寂しかったのですね。マクシミリアンさま」
カトレアは勘の鋭い少女だ。昼間の竜の羽衣を見た当たりから。マクシミリアンの妙な反応に気付いていたし、調味料の製法を買い取った辺りでは、物珍しさではなく懐かしさで行動していたのを感じ取った。
そして夕食のヨシェナヴェで、遂に感情のダムが決壊した事を、これもカトレアは感付いたが、何故、トリステインの王子であるマクシミリアンが、異国の物に懐かしさを感じていた事までは分からなかった。
「マクシミリアンさま……」
日中カトレアは、マクシミリアンに原因を聞こうと思ったが、虫が知らせたのか止めて置いた。
「マクシミリアンさまはマクシミリアンさまです。原因が何であってもわたしは絶対に気にしません」
そういって包み込むようにマクシミリアンの頭を抱き、カトレアは目を瞑った。
(何故ならわたしは、あなたの妻なのですから……)
やがて、カトレアも寝息を立て眠りだした。
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