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俺の四畳半が最近安らげない件
その物件にはテナントが入らない
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込まれてお縄になるのだけは勘弁してほしいので、俺はじりじりと出口に近寄り、ドアノブに手をかけた。
「―――おい、そっちの兄さん」
不意に老人に声を掛けられ、俺は弾かれたように飛び上がった。
「ひゃっひゃい!?」
「ここで、ラーメン屋を開くのか?」
「え!?いや…」
開くわけないだろう、こんな勝算の欠片もない立地で馬鹿じゃねぇの。そんな台詞が頭を閃いたが、俺は滝のような冷や汗を流しながら首を横に振るしかなかった。
「そうか…次の『主』になら、真相を教えてやろうかと思っていたんだが…」
「うぇ!?」
「えっ、そうなんですか!?」
ちょっ…冗談じゃねぇよ何でおれがこれからの人生棒に振ってまでこの物件の謎解きに協力しなきゃいけないんだよ!
「河上さん、ちょっと……私の云いたい事、分かりますよね……?」


………爺いぃぃぃぃ!!!余計な条件つけやがって!!!桜木の目の色が変わってんじゃねぇか!!


「いや、ちょっと待って桜木さん!これどう見てもラーメン屋を開ける店舗じゃないと思うんだけど!!分かるよね!?…え、なにその目は、ちょっと本当にやめて下さい…」
桜木は俺をガン見しながらも正確に出口側に回り込む。
「河上さん……」
「駄目だ無理ですこればっかりは絶対に駄目!!賭けてもいいけど半年で破産するわ!!」
「いや、多分問題なかろ」
爺は他人事だと思って、間延びした声で云う。
「何云ってんですか無責任にも程があるし、俺絶対こんなところで!!」
「ここは、売り上げが立つんだよ。…競合が一切居ない状態でな」
…いい加減なことを…!!
「じゃあ訊くが、これだけ大騒ぎしてんのに誰一人覗きにも来ないのは何でだ!?そろそろ昼飯時なのに!!」
「そりゃそうだろう。ここは『裏口』よ」
『裏口』と聞くや否や、俺たちは狭い四畳半の隅から隅まで舐めるように見回した。だがドアはやはり一つしかない。俺たちは再び、血走った眼を老人に戻した。
「適当なこと云ってんじゃねぇぞ爺ぃ、ドアは一つじゃねぇか!!」
俺達の怒鳴り声が終わるのも待たず、爺ぃはよろよろと台所の方に近づくと、流しの下の開き戸を開けた。
「おい何やってんだよ爺さん!」
爺さんの背中に大股で近づき、がっしと肩を掴んだその刹那、俺…と桜木は凍りついた。そして言葉を失った。否、この状況を的確に表す言葉を俺は知らない。だって、そうだろう。


流しの下は、昏く深い洞窟に繋がっていたのだ。


「―――ここを潜る、ということは、『契約』が結ばれるってこった。…お前さん、次の『主』になるんじゃろうな」
これは夢か幻か、はたまた爺ぃの戯言か。何一つ分からない状態なのだが。
洞から吹き抜けてくる風に含まれた瘴気にでもあてられたのか、俺はふらついた頭を大きく、縦に振って
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