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俺の四畳半が最近安らげない件
その物件にはテナントが入らない
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ぽい店内に踏み込んだ。
「あり得ないんですよね、この場所で」


俺は目を見張った。そして居抜きが不可能な事に思い至った。


「……四畳半、くらいか?」
「そうですね、そのくらいでしょうか」
広がっていたのは、アパートの居間としてさえ手狭な正方形の空間。狭いのは間口だけではなかった。
「……俺な、さすがに所謂『うなぎの寝床』だと思っていたよ。まさかの急展開だわ」
ざっと辺りを見渡す。申し訳程度のトイレと、どう考えても業務用ではない家庭用コンロ、水はけの悪そうな小さめのキッチン。まるで学生のアパートだ。
「こんな狭いキッチンでまともな営業は無理だぞ。第一、こんなしょぼい火力の家庭用コンロじゃ、麺すらまともに茹でられないよ」
「じゃ、あれじゃないですか?カップラーメン屋!なんかのテレビで観た事ありますよ。全国のご当地カップラーメンが置いてあって、テーブルとお湯だけ提供するっていう」
「…その誰でも出来るカップラーメン屋を、こんな滅多に人が通らない裏通りで?」
「…ですね」
「それにここ、多分営業するスペースじゃないよ」
そこかしこに散らばる空の段ボールを指す。
「倉庫として使っていたと思う。…テーブルの跡もないし」
「立ち食い」
「そこまでほったらかしの立ち食いはねぇよ」
「あ!屋台の倉庫!!」
「元々倉庫として貸し出してない物件を、わざわざ借りて倉庫にする意味は?」

うぅむ…俺と桜木は、天井を仰いで黙り込んでしまった。
「おっかしいなぁ…確かにここはラーメン屋として使っていた筈なんすよ…」
暫くして、桜木がぼやきを開始した。
「悔しいなぁ、俺にも分からないわ」
同じラーメン屋なら、何か見当がつくと高を括っていたのだが、結局さっぱり分からなかった。訳の分からない無力感がどっと押し寄せてくる。分からない以上、ここに居る意味もないのだが、なんとなく去り難く、俺と桜木はただぼんやりと、諦め悪くもこの不毛な四畳半に立ち尽くしていた。


「―――おのれらは、次の『主』か?」


突然の皺枯れ声に、俺たちは弾かれたように振り返った。入口の辺りだ。煤けたドアの隙間から、こちらを伺うように見つめている老人がいる。桜木が大股でドアに駆け寄り、思いっきり押した。
「おい、ちょっと待てって!」
予想した通り、老人は突然迫って来たドアによろめき、転びかけた。ドアの隙間から垣間見える、スローモーションのようにはためいて倒れ込む薄茶色のカーディガン。
「ぅへぇええい」
気が抜けた屁のような声を上げて、老人はゆるゆると尻もちをついた。
「すっすんません!大丈夫ですかっ!?」
桜木が手を貸して起き上がらせる。その動作も妙にせっかちで、老人は強引に腕を引っ張られる形で立ち上がった。年のせいか、体幹はもうよろよろ
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