第9話 さらば涙、ようこそ笑顔
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
だ。
その勢いに、圧倒されながらも。同じ地球人として「幸せになれ」と訴える彼の言葉に、太?の心は徐々に吸い寄せられていた。
親も師もいなくなった彼にとって、この高官らしからぬ男の存在は、最後の希望なのかも知れない。
「君は今まで、笑えねぇ目に遭ってきたかも知れん。もしかしたら、この先もそうかも知れん。だったら平和な今だけでも笑っておかんと、辛気臭いだけ損じゃろが! ――『さらば涙、ようこそ笑顔』、だ!」
「……!」
過去との決別。光ある未来。それは、太?にとっては生涯つきまとう難題であった。だが、だからこそ向き合わねばならないのかも知れない。
前を向いて、生き抜いた上で。いつか、シンシアと逢うために。
(……笑顔、か)
最期の瞬間に彼女が見せた、あの笑顔。心からの幸せを感じさせる、あの微笑。それを思い起こした太?は、天を仰ぎ――涙を堪えていた。
笑顔を取り戻すのも、涙と別れるのも。今はまだ、難し過ぎる。
だが、それでもいつかは。
――そう思う心は、すでに彼の中に芽生えていたのだった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ