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星雲特警ヘイデリオン
第9話 さらば涙、ようこそ笑顔
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黒のパンチパーマ。どれを取っても、政府の官僚とは思えない容貌である。現場の鬼軍曹、と言われた方がよほどしっくり来る外見だ。

(父さん……)

 彼から、殉職した父の遺品である赤いスカーフを受け取った太?は――その形見を、静かに見下ろしていた。

「なんだなんだ、黙りこくっちまって。……あぁ、この先の暮らしが心配なのか。なぁに心配はいらん、マスコミには君のことを報道しないよう、すでに手を回してある。極力、君が世間から変な目で見られることのないようにしろって、ユアルク殿からもクギを刺されてることだしな」
「……オレは結局、何もできなかった」
「あん?」
「自分に出来ることを、力の限り尽くしても……結局、何一つ守れなかった。オレに、もっと力があれば、こんなことには……」
「……」

 高官は高らかに笑いながら、隣に立つ太?を励まそうとしている。が、過去の罪から抜け出せずにいる少年は、窓ガラスに手を当てたまま沈痛な面持ちとなっていた。
 黒のレザージャケット。赤いレザーグローブ。赤いレザーパンツ。高官が用意した、それらの私服に袖を通し、名実共に「ただの地球人」に生まれ変わった今でも――その貌は、消せない罪に囚われている。

 しばらくその様子を眺めていた高官は――何を思ったのか、いきなり太?の両頬をつねり始める。

「……っ!? いひゃい、いひゃい! なにひゅるんでひゅか!?」
「いかんなぁ! いつまでも若いモンが、そうやってメソメソしてちゃあ!」

 その不意打ちに涙目になりながら、抗議する少年。そんな彼の眼を真っ直ぐ見つめながら、高官は声を張り上げる。
 周囲に立っている黒尽くめのガードマン達は、「また始まった」とため息をついていた。

「俺はな、はっきり言って君の苦しみを全く知らん! ユアルク殿からは、5年間宇宙で辛い思いをしてきた……としか知らされておらんからな! だが、そんな俺でも分かることはある!」

 ――太?の素質を軍事利用させないため、ユアルクは彼が「地球人でただ1人の星雲特警」だった事実を伏せていた。
 それでもおおよその経緯を察していた高官は、少年が歩んできた道の辛さを慮りながらも、喝を入れ続ける。

「君に足りんのはな、力なんぞではない! ――笑顔だ! せっかく帰ってきたというのに、そんなに辛気臭い顔ばかりしてるから……目の前に転がってきた幸せも、みんな逃げちまう!」
「……え、がお……?」
「そうだ! だから君は、笑顔にならにゃいかん! 子供の顔が暗く沈んでいるのは、その子が不幸だからだ! だから君は、幸せにならにゃあいかん! その君が、希望を自分から投げちまうのは、至極勿体ねぇ話だ!」

 やがて、太?の頬から手を離した高官は、再び豪快に笑うと――力強い掌で、少年の肩を掴ん
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