第9話 さらば涙、ようこそ笑顔
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警の証を預かった蒼海将軍は、その重さを噛み締めるように、青い胸に片胸当てを抱いていた。
「――さぁ、帰ろう。お前がいるべき星へ。お前が、歩むべき道へ」
そんな彼の、目の前で。花飾りだった消し炭が、砂細工のように崩れ落ちて行く。
◇
本来、太?は戦いには向かない性格である。そうと知りながら星雲特警として戦わせてきたのは、シルディアス星人に対抗できる戦士を1人でも多く揃えるためであった。
そのシルディアス星人が1人残らず滅亡した今、もう太?がヘイデリオンとして戦う理由はない。何より、これまでに負った傷が、余りにも深過ぎる。
――そうした背景を鑑みた、メイセルドの判断に基づき。太?はコスモアーマーとシュテルオン、そして「ヘイデリオン」のコードネームを、星雲連邦警察に返上。
彼は名実共に、一介の地球人でしかない 火鷹太?に戻ることができた。公的には戦死とされ、伝説となった「星雲特警ヘイデリオン」の英雄譚は、本人とは無縁の宇宙で語り継がれていくことになる。
その後、太?はユアルクに連れられ地球へと帰還。彼と繋がりのある地球守備軍出身の政府高官に、身柄を託されることになった。
シルディアス星人が滅びた今、地球が異星人の侵略を受ける可能性はないに等しい。彼らの犠牲を経て、ようやく太?は故郷の星へ帰ることを許されたのである。
だが――5年ぶりに地球へと帰ってきた今になっても。少年の心は、晴れないままであった。
◇
「ユアルク殿には、35年前にも世話になっててなぁ。地球守備軍が創設される前から、この星を守ってくれていた大恩人なんだ。その彼が、まさか5年前の災厄の生き残りを連れて来るとはなぁ。5年間も宇宙人と暮らしてきた地球人なんて、前代未聞だぜ。コスモビートルのパイロットだった、君のお父さん…… 火鷹少尉も生命力に満ち溢れた男だったが、君はそれ以上だな」
「……」
「しっかしあの人、昔から見た目が全然変わっとらんなぁ。俺なんてもう、白髪がこんなに増えちまって大変だぜ。宇宙人はほとんど歳も取らねぇんだから、得だよなぁ?」
「……」
――20XX年、東京。
5年前に起きたシルディアス星人の襲撃も、この時勢においては過去のものとなっていた。人々は地図から消え去った町の名前すら忘れ、平和な日々を謳歌している。
一方で、幾度となくこの星を救った「星雲特警」の存在は広く認知されており、彼らを神の使徒と祀り上げる宗教まで台頭していた。
東京スカイツリーの景観から、そんな地球の日常を見下ろす太?の隣で――地球守備軍の制服に袖を通す、初老の男が豪快に笑っている。
しなやかでありつつも筋肉質な体格に、強面な顔つき。白髪が混じった、
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