第8話 少女達の昇天
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御出来たはずなのだ。なら、このような事態など起きるはずもない。
彼女自身が、自ら理性を捨てない限りは。
「……!」
凶戦士を彷彿させる狂笑と、凶眼。その貌に紛れて頬を伝う雫が、太?にそれを教えていた。これが彼女の、決断なのだと。
――現世の外にしか、流れる先はないのだと。
だが、そんなことを太?が許すはずはない。シンシア自身もそれを理解していた。だから自らの手で子供達を骸に変え、森に火を放ったのである。
――自分は死すべき悪であると訴え、全ての退路を断ち切るために。
(タロウ。あなたなら、きっと分かるよね。平和を守る星雲特警なら、みんなのために、何をしてあげられるか。私は、ずっとそれを信じてる)
そして、こうなった以上、もはや後には引けない。すでにシンシアは、コロルとケイを手にかけてしまった。
血と闘争を好む悪鬼になってしまった。太?が何よりも否定したかった未来に、繋がってしまった。
――彼女を放っておけば、必ず犠牲者は増え続けていく。もう彼女は、無害な少女ではない。
その現実を受け止めた上で、太?は悲痛に歪んだ貌のまま――声にならない彼女の叫びを、確かに感じていた。
「……うん、分かるよシンシア。何をしたらいいか、オレには分かる」
ならば、応えねばならない。それが彼女の望んだ世界ならば、それを導いていけるのは、自分だけだ。
――彼女を幸せに見送れるのは、自分だけだ。
「ごめん、少しだけ先で待ってて。コロルも、ケイも、君も……みんな一緒に。必ず、迎えにいくから」
泣きながらでも構わない。叫びながらでも、構わない。それでも、自分に託された最後の役目は、果たさねばならない。
――星雲特警として。そして、彼女達の家族として。
その想いに突き動かされるまま、太?は走り出す。「装星」と叫んだ彼の声は、嗚咽と慟哭が混じり合い――もはや、言語の体を成していなかった。
真紅の鎧を纏う彼は、蒼く輝く剣を振りかざし、彼女に向かって飛び上がっていく。
――そんな彼を、前にして。
狂気に沈んだはずの少女は、子供達の骸を抱き寄せながら――片手を広げ、微笑を浮かべていた。
愛する人を、受け止めるように。
そして。
淡い桃色の花飾りが、空の向こうへと舞い上がる。
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