第7話 戦いと鮮血
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まっている身である。
仮に太?がユアルクとメイセルドを倒せたとしても、必ず他の星雲特警がここに駆けつけて来るだろう。そうなればやがて、数多の戦士達がこの星に押し寄せて来ることになる。シンシアの首を取るために。
それでも太?は、シンシアを守るために徹底抗戦に踏み切るだろう。恐らくは、コロルやケイも。彼らと1年間、共に暮らしてきたことで……それは痛いほどに理解していた。
――だからこそ、見えてしまうのだ。この先の未来にはもう、破滅しかないのだと。
例えシルディアス星人の「帝王」を倒した勇者であろうと、太?は所詮1人。星雲連邦警察を相手にして、自分達を守りながら戦い抜けるはずがない。
必ずいつか、力尽きてしまう。滅ぶべき血族を守るために。あんなにも優しく、愛おしい青年が。
――自分が滅ぶことよりも。今となってはそれこそが、シンシアにとっては堪え難い結末となっていた。
だが、自分が生贄になると訴えたところで、太?がそんな選択を受け入れるはずもない。彼は何が何でも、自分を守るために骨の一本になるまで戦う道を選んでしまう。そんな男だからこそ、1年前にあんな行動に出たのだ。
このままでは自分はもちろん、太?も子供達も助からない。だが、自分を差し出そうとしても彼は、それを阻んでしまうだろう。
誰も助からず、最後は1人残らず絶え果ててしまう。その結末は、自分達が見つかってしまった昨日の時点で、確定していたのだ。
太?も恐らくは、すでにそのことを察している。その上で自分達を気遣い、敢えて強気に振舞っていたのだ。
――メイセルドとユアルク。その強さも恐ろしさも、深く知っているというのに。
だが、そうやって取り繕うことさえも、今となっては難しい。初めから破滅が決まっていた幸せを、1年も続けていられたのは、最早奇跡と言っていい。
(……でも、それでも……私、は……)
――だが。全てが先延ばしの繰り返しから生まれた、欺瞞と知りながら。
シンシアはそれでも、僅か一欠片でも希望を紡ぐために……ある決断を下そうとしていた。
それは人として生きることを求められた自分には、絶対に許されない悪業。積み上げてきた幸せを全て、水泡に帰す所業。
それでも、もう彼女には。これしか、残されていなかったのである。
――太?だけが助かり、その後には何も残らない。そんな、彼が何としても避けようとしていた未来を、実現するしか。
「……コロル、ケイ」
「え?」
「なぁに?」
突如、落ち着き払った声色に変わった。そんなシンシアの変化を不思議に思い、コロルとケイは思わず顔を上げる。
――その時すでに、彼女の貌は。子供達が今まで見たことのない、形相となっていた。
「この戦いが終わったら…
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