第6話 流れ着いた先
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せたのは、その直後だった。
「あっ……」
「……君も、コロルもケイも、必ずオレが守る。寝る前に、そう言っただろう? 明日は、コロルに剣を教えてやる約束だしな」
「コロルも……タロウの役に立ちたいって、いつも言ってたもんね。……私も、それは同じだよ」
頬を染め、顔を近づけながら、シンシアは太?と視線を交わす。濡れそぼった瞳は、自分に残された最後の希望を、ただ真っ直ぐに見つめていた。
「誰からも愛されない。憎まれ、滅ぼされるか、滅ぼすか。それしかないって言われてきた私に、こんな暮らしが出来る日が来るなんて、信じられなかった。遠い星の子達にしかできないことだって、ずっと思ってた」
「……それは、コロルやケイも一緒だよ。2人とも、特異な異星人同士の混血児だったから、異端視されてこの森まで追いやられた。オレだって、星雲連邦警察に付き合いきれなくて、ここまで君と逃げてきた。みんな、君と同じ。遠い世界の希望に縋って、ここまで流れてきたんだよ」
「じゃあ……これからもずっと、みんな一緒に流れていける?」
「もちろん。それを邪魔する人達なんて、オレがみんな追い払ってやるさ。……教官と隊長は、怒るかも知れないけど」
やがて2人は、囁き合いながら身を寄せ合い、互いの温もりを確かめ合う。子供達を、自分達の声で起こさないよう……静かに、ゆっくりと。
「……だから、信じて待っていてくれ。どんなことがあっても、オレ達はみんな一緒だから」
「うん……うん……」
シンシアは、そんな太?の言葉に酔いしれるように。逞しい彼の胸に顔を埋め、微睡みに沈んでいく。
こうしていれば、例え夢の中でもきっと彼が助けに来てくれる。そんな、どこまでも都合の良い、甘い夢を抱いて。
――そんな幼気な少女の細い肩を、抱き寄せながら。太?は鋭い眼差しで夜空を仰ぐ。その眼はかつてない困難に挑む、勇敢な色を湛えていた。
(……ユアルク教官を退けた今、再び彼が1人で来るとは考えにくい。……来るだろうな、隊長……)
◇
――翌朝。聞き慣れない……否、昨日初めて聞いた「音」に反応したコロルが、慌てて家から飛び出して来た先では。すでに身支度を整えていた太?が、剣呑な面持ちで佇んでいた。
「タ、タロウ! この音っ!」
「あぁ、わかってる。……悪いなコロル、剣を教えるのは今日の戦いを乗り切ってからだ」
コロルの後ろに隠れているケイとシンシアは、不安げな面持ちで互いの顔を見合わせている。コロルも棒切れを握って身構えてはいるが……その足は、ガタガタと震えていた。
「タ、タロウ……大丈夫かなぁ……」
「……大丈夫だよ。タロウなら、絶対に大丈夫だから。私達は信じて、ここで待つの。タロウがいない間、この家を守れるのは私達なんだから……
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