第5話 ヒダカ・タロウの名を捨てて
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句で担ぎ上げ、体良く利用し続ける。
そのような師としての愚行を改めて思い知らされ、メイセルドもユアルクも、沈痛な表情を浮かべていた。
◇
――現在、太?は戦場の混乱の中で行方不明になった……ということになっている。
「帝王」を討った英雄としてすでに祭り上げられているヘイデリオンの名を、今更「シルディアス星人を連れて逃げた反逆者」という事実で汚すわけにはいかないからだ。
シルディアス星人の犠牲になった人々の総数は、数千億人にのぼる。彼らの遺族にとって「星雲特警ヘイデリオン」は平和と正義の象徴であり、彼を讃える人々の声が、星雲連邦警察への支持にも繋がっているのだ。
それだけに、今のヘイデリオン――太?本人の行動が明るみに出てしまうのは、上層部にとっては相当な痛手なのである。
そこで上層部は、彼との関わりが深いメイセルドとユアルクに、太?の捜索と説得を命じているのだ。最悪の場合、シルディアス星人の生き残り共々抹殺せよ……とも。
――メイセルドとユアルクにとっても、これは太?を救う好機であった。散々手酷く利用してきた罪を償い、彼を助けるには。
英雄という名誉を与え、「絶対的正義」の庇護下に導くしかない。それが、2人の決意だったのである。
『……タロウは、まだかなりの練度を維持しています。恥ずかしながら、私1人では……』
「あぁ、わかっている。なにせ相手は、お前が育てた『英雄』だからな。……お前はそこで待機していろ。明日は、私も降下する」
『了解しました……』
「我々の手でシルディアス星人を始末するにせよ、まずはタロウを抑えねば話にならん。……明日が勝負だ」
やがて通信を切り、独りになったメイセルドは天を仰ぐ。褐色の肌を持つスキンヘッドの老兵は、憂いを帯びた眼差しで眼前の惑星を見つめていた。
「……お前の痛み。悲しみ。それら全てを知りながら、背を向けておいて……何が父。何が師。笑わせてくれる……」
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