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星雲特警ヘイデリオン
第5話 ヒダカ・タロウの名を捨てて
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闘力においては他者を圧倒する才覚を持っていたのである。そしてそれは、シルディアス星人との抗争が激化していた当時において、非常に貴重であるとされた。

 そのような世情もあり。太?は訓練を始めてから僅か2年余りで、星雲特警の資格を獲得。弱冠14歳という異例の若さでコスモアーマーを託され、コードネーム「ヘイデリオン」を与えられたのだった。
 ――だが、両親を殺した相手にすら、心から憎しみをぶつけられない繊細な少年にとって。ここから始まる戦いこそが、本当の地獄だった。

 血で血を洗う過酷な戦いの日々。自分自身に降り掛かる危険や疲弊だけでなく、戦う相手の断末魔や悲鳴も、彼の心をすり減らしていた。

 ――いつまで、こんな戦いを続けなくてはならないんですか! あと何人殺せば、この戦いは終わるんですか!?

 嗚咽交じりに、そう訴える教え子の嘆きを……メイセルドとユアルクは、今でもはっきりと覚えている。
 そして、父として兄として、師として接してきた彼らでさえも、その問いには最後まで答えることが出来なかった。まだ太?の技が洗練されていなかった当時は、シルディアス星人達との決着が付く見通しなど、まるで立っていなかったのである。

 いつかは終わる。あと半年。あと数ヶ月。お前が力を尽くしてくれれば。
 ――そんな曖昧な言葉ではぐらかし、先延ばしを繰り返す。そうしてでも彼らは、天賦の才を持つ太?の力に頼るしかなかったのだ。それがどれほど、少年の心を苦しめているのかを知りながら。

 そして、太?が「星雲特警ヘイデリオン」となってから2年。彼が16歳を迎えた頃――ついに、限界が訪れた。

 シルディアス星人達を束ねる「帝王」との決戦。それさえ制すれば戦いは終わり、これ以上血が流れることはなくなる。
 メイセルドにそう説得された太?は、言われるがまま死力を尽くして戦い抜き、ついに「帝王」を打ち倒すに至ったのだが――結局、シルディアス星人達の血が止まることはなかった。

 ――その後になってようやく、太?は星雲連邦警察の決断を悟ったのである。シルディアス星人を絶滅させるまで、自分達の戦いは終わらないのだと。
 そして、彼らの血族を断ち切るべく開始された、難民キャンプへの襲撃。その渦中でついに、太?の心は限界を超え――星雲連邦警察への叛逆に至ったのである。

 彼を欺き、利用し続けていれば、いずれはこうなる。それはメイセルドもユアルクも、以前から察していたことだった。
 しかし、星雲特警として優れた資質を持っていた彼への親心が、それを誤魔化していたのである。彼は強い子だ、だから乗り越えられる、きっと大丈夫。
 ――そんな当人の思いを無視した結果が、この始末だった。

 太?の苦悩を知りながら、それに目を背け、天才だ英雄だと美辞麗
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