第5話 ヒダカ・タロウの名を捨てて
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え去った。そして、その町に住んでいた住民達は全員、死亡したものとして報じられたのである。
だが、その犠牲者達の中に、ただ1人。遺体の一欠片も見つからず、行方不明者として処理された少年がいたのである。
その少年――火鷹太?は、当時現場に駆けつけていた2人の星雲特警により、保護されていたのだ。
メイセルドと、ユアルク。この2人によって。
――シルディアス星人は、一度取り逃がした獲物への強い執着心を持っている。このまま太?を解放しても、逃げ延びた個体のうちの1人が、必ず少年を殺すために地球へ帰ってくるのだ。
しかも彼らはほとんどの個体が、「一度獲物を逃せば厄介な敵となって復讐される」という経験を共有している。直接彼らに襲われた地球人の中で唯一の生き残りである太?は、間違いなく標的にされてしまうのだ。
そうなれば、なす術を持たない少年は今度こそ殺されてしまう。その「ついで」で、再び地球人が何人殺されるかわからない。彼らは血と闘争を好みはするが、自分達に損害が出ない範囲を選ぶ狡猾さも兼ね備えている。
――「星雲特警が動かない程度」で、幾つもの命が奪われることになるのだ。
経験則からそう判断した2人は、地球が再びシルディアス星人に襲われるリスクを回避するため。彼らに襲われた地球人達の中で、唯一生き延びた少年を、自分達で引き取ることに決めたのだった。
――少年の父であり、地球守備軍の伝説的戦闘機乗りだった火鷹吾?は、シルディアス星人との戦いですでに殉職している。元より彼には、身寄りもないのだ。
とはいえ、当時はシルディアス星人を駆逐するために、1人でも多くの星雲特警が必要な状況であり――無力な少年を穏やかに養える余裕など、ありはしなかった。
そこでメイセルドは、太?に自衛手段を身に付けさせるべく、彼を星雲特警として育てることに決める。その判断には、シルディアス星人にマークされている太?を、地球を狙わせないための囮に使おうという、星雲連邦警察の思惑も絡んでいた。
そんな上層部の非道さを察しつつも、結局はその通りにするしかない。それに、地球人である太?を星雲特警として育成すれば、地球への襲撃に味を占めかねないシルディアス星人に対する牽制にもなり得る。
そうした葛藤を抱えたメイセルドによって、教官として選ばれたユアルクは――太?を師として兄として、徹底的に鍛え上げた。
――争いを好まない穏やかな性格に反して、太?は星雲特警としての素質に満ち溢れていた。加えて父譲りの操縦センスもあり、シュテルオンのパイロットとしても優秀であった。
捜査能力や戦術眼といった、人の上に立つ者に要求される資質こそ皆無ではあったが、単純な戦
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