第3話 ガラスの平和
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
シンシア!」
「ひゃあ!」
だが、背後から自分の名前を呼ばれた途端。少女は素っ頓狂な声を上げてひっくり返ってしまう。ショートボブに切り揃えた、黒く艶やかな髪が――ふわりと靡いた。蓮に似た淡い桃色の花飾りが、それに呼応するように揺らめく。
紫紺の肌を保つ異形の少女は、恐る恐る振り返り――眉を顰めたタロウと目が合う瞬間、肩を竦ませた。
「タ、タロウ……」
「シンシア、いつも言ってるだろう。君は、あんまり家から離れちゃいけないんだ。食事ならオレが探してくるし……」
「で、でも……いつもタロウに任せてばかりだし、私も何かしなきゃって……」
「何もやってない、ってことはない。いつもコロルやケイと遊んでくれてるだろう」
「……うん……」
刀剣のような鋭い爪を持ちながら、まるで覇気のないシルディアス星人の少女。そんな彼女に苦笑を浮かべながら、タロウは手を差し伸べる。
爪を全く恐れない、その掌に頬を染めて――シンシアは彼を傷つけないようにゆっくりと、温かい人間の手を握る。
やがてタロウの手を借りて立ち上がった彼女は、コロルに柔らかな微笑を送った。
「……今日は、コロルも一緒に来てくれたんだね。ありがとう」
「へへっ! なにせ今日はご馳走だからな!」
「シンシア。先に帰って、ケイと遊んでてくれ。……2人して、遠くまで行かないようにな」
「あ、あはは……」
苦笑交じりにクギを刺すタロウの言葉に、シンシアは乾いた笑いを浮かべる。
――その時だった。
「……!?」
「あれ……タロウ、この音、なに?」
タロウは咄嗟に顔を上げ、一瞬にして剣呑な面持ちに変わる。その原因である「音」を耳にしたコロルは、聞いたことのない波長に首を傾げていた。
一方、タロウの様子からただならぬものを感じたシンシアは、不安げな表情を浮かべている。
(この音はシュテルオンの……まさかッ――!?)
やがて、その「音」の実態を知るタロウは眼を見張る瞬間。茂みの向こうから、眩い閃光が飛び出して来た。
「危ないッ!」
「きゃあ!」
「わぁあ!?」
タロウは咄嗟にシンシアとコロルを抱き寄せ、地面に伏せる。彼らの頭上を閃光が通り過ぎた瞬間、着弾した先の木に風穴が空いてしまった。
「光線銃……やはり!」
その光景を目の当たりにしたタロウは、身を起こすや否や腰のホルスターに手を伸ばし光線銃を構える。
そして――シンシアを狙って飛んで来た閃光を、こちらからの銃撃で弾いた。
「コロル! シンシアを連れて家に帰るんだ!」
「タロウ! なんだよあれ、どうなってんの!?」
「いいから早く! シンシア、走れるか!?」
「あ、ぅう……!」
銃撃が止んでいる間に、タ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ