第11話 神は力を、人は勇気を
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ら、紙のように引き裂かれていく命が、塊となり、破片となり、四方八方へ離散していく。
善も悪もなく、ただ己の生態圏を拡大するためだけに生きる、獰猛にして純粋な怪獣軍団は――ここに。
完全な終焉を、迎えるのだった。
「や……やりやがったぜ、あいつ……。まさか、威流の空手で怪獣を……」
「威流……! やっぱり、あなたが……!」
あまりの光景に、誰1人言葉を発せられずにいる中……いち早く状況を飲み込んだ2人の「救世主」が、感嘆の息を漏らす。
やがて、そこから伝染するかのように――「大怪獣の死」と「主神の勝利」を悟り、我に帰った飛行艇部隊の面々が、爆炎の如き歓声を上げていた。
『神官長! やりました! 我らが主神タイタノアが、ついに大怪獣めを……!』
『ファイター3も無事です!』
『そうか……! 皆の者、よくやった! よくやってくれた、本当に……!』
勝利に酔い痴れ、黄色い叫び声を上げ続ける神官達。「神に仕える淑女」にあるまじき「民」としてのその素顔を、ルクレイテは――超能力を通して見つめていた。
「父上……タケル様……」
だが、その眼に避難の色はない。長く苦しい時を経て、ようやくこの星は怪獣という脅威から解放されたのだから。今くらいは、無礼講……というわけである。
やがて彼女の熱い視線は――この平和を齎した父と救世主に向けられた。巨人の背を見上げる巫女の瞳には、もう引っ込むことのない感涙で溢れている。
「ふぅっ……やったな、タイタノア。これは、あんたの勇気で掴み取った勝利だ。これでもう、誰にも恥じない立派な神様だな!」
『……』
「タイタノア?」
――そして。災厄の根源を討ち取り、この星と地球に平和を取り戻した救世主は、共に戦った主神の顔色を伺う。
神としての名誉を守る、という悲願は達成されたというのに、どうにも反応が薄い。そんなタイタノアの様子を気にかけ、威流が声を掛けた――途端。
『ぬほぉおぇぇえ! やったぁああ! やったぞぉぉお! 余が、この余がぁあぁ! あの宇宙怪獣をぉぉお! 討ち取ったぁあぁあい!』
「うぉわぁっ!?」
――今度はタイタノアが、若干遅れて狂喜乱舞し始めたのだった。感激のあまり胸のハッチが開いてしまい、威流はそこから巨体の外へと放り出されてしまう。
幸い、すぐ真下に大きな木があったため、威流は大量の枝葉をクッション代わりにして難を逃れていた。緑葉塗れになりながら、救世主は眉を潜めて踊り回る巨人を見上げている。
「……!? 竜也、あのロボットから威流が!」
「オイオイ……何でもありかよ、この星は」
「じゃあ、大怪獣を倒したのは……!」
「……そういうこと、らしいな。やれやれ、コスモビートルのパイロットが空手の修行なんかし
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