第7話 円華の想い
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も振らずモニターに集中していた。
◇
――志波家は代々、獅乃咲家に仕える従者の家系。
その生まれである円華もまた、志波家に名を連ねる軍人の娘として、幼い頃から鍛錬に励んでいた。
だが男勝りに育ったとは言え、単に家のためだけに命を張れるほど、彼女も聖人ではない。自分を姉のように慕う、葵への愛情が――彼女を、戦う道へと向かわせていたのである。
そんな円華は、葵への献身ゆえに。
一般家庭の出身でありながら、「成り上がり者」として獅乃咲家に婿入りすることとなった日向威流という男に対して、不信感を抱いていた。
――当時、葵に対する縁談の話が無数に集まっており、そのいずれもが獅乃咲家の地位と名声を狙ってのものだった。間近でそれを見続けてきた円華にとって、葵に近づく男は皆、大切な家族を苦しめる「敵」だったのである。
まして成り上がり者というのは総じて、上昇志向が異常に強い。自分の力を世に知らしめんとする、自己顕示欲の強いケースがほとんどだ。そんな者達の1人である威流が、獅乃咲家を利用しようと企てないはずがない。
そう確信していた円華は、彼をむかえ入れようとしていた雅に猛反発し、威流を排除しようと決闘まで挑んだ。――そして、完膚なきまでに敗れてしまったのである。
その後、彼女は威流の同期として、彼と同じ戦場へ踏み出し……その人柄を見極めるべく、戦友であり続けてきた。本当に威流が、葵に相応しい男であるか、確かめるために。
そうして、共に戦っていくうちに。いつしか円華は、気づいていた。
威流の胸中には、名声への執着などまるでなく――ただ愚直なまでに、「皆を守る」ためだけに戦っていることに。そして、そんな彼のことを――いつも見つめている自分に、芽生えてしまった想いに。
だが、彼女はそんな自分の恋を認めるわけには行かなかった。
威流は葵の婚約者であり、自分は獅乃咲家の従者。そのような間柄である2人が、結ばれるなどあり得ないし、あってはならない。
ゆえに彼女は戦後、懸命に葵の背を押し、威流との婚姻を後押しするようになった。自分の初恋を、終わらせるために。
なのに、その矢先で……今回のような事態が起きてしまった。婚約者のことを憂う葵の前である以上、自分が涙を見せるわけには行かないと、あの日から気を張り続けていたが――ここにきて威流の生存を知り、ついに堪えていた涙腺が決壊してしまったのだ。
(もう少し……もう少しの辛抱だからね。必ず、助けに行くから……お願い! 生きていて、威流!)
だが、どんな雨もいつかは晴れて、虹が架かる。それと同様に――いつしか円華は、涙を拭い立ち上がっていた。
例え叶わぬ恋であろうと。大切な妹のためにも、最愛の男を助け出すと――己に誓うよう
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