暁 〜小説投稿サイト〜
IS〜夢を追い求める者〜
最終章:夢を追い続けて
第60話「ようやく」
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カに声を掛けられ、簪は薙刀を支えに立ち上がる。
 怪我しない程度とはいえ、良い一撃を喰らったのだろう。
 楯無さんもやれやれと力を抜いて溜め息を吐いていた。

「秋十、構えろ。」

「えっ、俺?」

「私も不完全燃焼でな。」

 木刀を渡され、いきなりそう言われる。
 ...二人相手にして不完全燃焼か...。いや、千冬姉ならおかしくないけど。

「...分かった。」

「...ほう....。」

 千冬姉とやり合うのはいつ以来だろうか。
 おそらく、洗脳される前以来だろう。
 洗脳されてからは試合と言うか一方的な蹂躙だったし。

「やはり、見違えたな。」

「研鑽を積み続けてきたからな...。行くぞ!」

「来い...!」

 千冬姉は俺の積み上げてきた努力の“厚み”を見抜いてきた。
 おそらく、それを想定した上で、俺を上回る反応をしてくるだろう。

「......!」

「っ...!」

 一息の下に千冬姉に肉迫し、横薙ぎに一閃。
 全力ではないが、相当な早さで振るったが...あっさりと防がれる。

「はぁっ!」

「っ...!」

 防いだ所からの斬り返しが迫る。
 俺は上体を反らしてギリギリで避け、そのままバク転して間合いを取る。
 当然の如くバク転直後を狙って攻撃を仕掛けられる。

「(だけど、それはマドカとの手合わせで何度も見た...!)」

 やはり姉妹と言うべきか。
 細部は色々違うとしても、似たような戦法を使ってくる。

「ぜぁああっ!」

「むっ...!」

 攻撃を防ぎ、一度後退する。
 一歩二歩と後退し、三歩目で下がると同時に強く踏み込み、逆に肉迫する。

「ふむ...。」

「ぐぅっ...!」

 しかし、その渾身の一撃はあっさりと凌がれ、反撃でまた後退させられる。

「では、こちらから行くぞ。」

「っ....!」

 そして、そこで千冬姉が攻勢に出た。
 ...そう。何気に今まで千冬姉は自分からは動いていなかったのだ。

「(望む所だ...!)」

 元より、千冬姉にあっさり負けているようでは、桜さん達に勝つなど夢のまた夢。
 例え今勝つのは無理でも....!





「うぐぅ....。」

「うむ、中々良かったぞ。」

 ...千冬姉には、勝てなかったよ...。
 いやまぁ、わかっていたけどさ。思った以上に適わなかった。
 悉く攻撃は防がれ、逆にこちらの防御は貫いてくる。
 俺も経験を積んで動きは分かっていた。
 ...だが、その上を行くようにまるで無意味だった。

「まともに攻撃も当てられなかった...。」

「いや、あの技はひやっとしたぞ。」

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