第二話 それぞれの事情
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は、正直信じられませんでした。満面の笑顔で語る母には悪いと思えど、僕はどう見ても貴女に似ましたと、むくれてしまいました。
「つっくんは、十分『紳士』だと思うわ」
だってお母さんにこんなに優しいんですもの、そう笑った。
ーーーーー紳士
響きが良い。僕の目指すところが決まりました。
紳士たる者、―――とまず紳士の何たるかから入り、色々調べ回ってなんちゃって紳士の完成です。
でも落とし穴が、
『大和撫子』
いつの間にだか言われていた僕の渾名。
親切で丁寧、は『お淑やか』に受け取られたようです。
そんな小学校生活もいよいよ終止符を打ち、もう中学生となりました。
早かった様な、とても長かったような。
入学式には、母が付き添ってくれました。父は相変わらず、どこで何をしているのか。
きっとどこかで頑張っているのでしょう。
ここまで何も無く無事に暮らしているのだから、帰って来たらちゃんと労ってあげたい。
節目を迎えると、どうも感傷に浸ってしまうように。年ですかね。
学校の端に植えられた桜並木の際を歩いていると、先客が居ました。
学ランを羽織った、背の高い黒髪の綺麗な男性でした。
一陣が過り、振り返る黒。
ざああっと、薄桃色で塞がれた視界が晴れたとき、悟ったその人の正体。
それから、僕は強さを求めました。
彼の隣に居る為には、必要でしたから。
何でか、また人生をやり直している。
これでもう3度目だ。女、男、女と性別に統一性も無く、時代は現代のみだからまだマシかもしれない。娯楽と自由は欲しい。
前回、僕は妻帯者だった。娘も一人居た。
うん。自分は良くやったと思う。絶対結婚なんか無理だと思っていたから。
妻は幼なじみで、僕の事情にも明るかった。
なんでも相談に乗ってくれるので、甘えていた。
元女だった人生を語る上で、女心が解る分、まともに付き合える気がしない。
今生は独身だ、と笑って言った事もある。
しかめっ面の彼女の一言は、それまでで一番の衝撃だろう。
家族との縁の薄い人生だったから、正直戸惑ったけれど、アンタくらい面倒みれるわよ、との何とも頼もしい発言に惚れた。
オカンだ。
いったら殴られた。
まあいろいろあったのだけど、娘も無事生まれて、幸せに暮らせてただろう。
何かと出張の多い仕事だったけど、引っ越し先は恵まれていたし。
そういえば、仲良くなった子が居た。妻と娘と3人で並ぶと姉妹みたいで、うらやましい。
楽しそうじゃないか。女子な会話に交じりたい。たま
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