1-1話
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そして、触覚が感じられるようになった所で…なぜか鼻が痛かった。
「―――…う…ん……」
寝心地の悪さと鼻を痛みに呻きながら瞼を開けた。
するとそこには顔面があった。
「サ、る……!?」
見たこともない顔が獣であった奇妙さに跳ね起きた。
眠気など吹っ飛んだ。 混乱する頭は理解しようと必死に回転させようとする。
オレが反応すると、チンパンジーのような体格をさせた猿らしき獣は一目散に逃げていく。
その俊敏な後ろ姿を目で追う。
どんな種類かわからない未知の獣はオレという存在を恐れて、鬱蒼《うっそう》とした緑の中へと消えていく。
緑…?
森……?
鬱蒼《うっそう》とした森林?
自分でもおかしなものを見たことに気付いて、猿が消えていった場所から視界を周りへと広げた。
左右を振り向くと、そこには緑があった。
上をむいても木々があった。
どこを見渡しても自然があった。
土の匂いがした、動物の気配がした、森の生暖かい空気を感じた。
人工的な文明とは掛け離れた空気が辺りを支配している。
それは自分にとって慣れ親しんでないもの。
「ジャン…グル?」
見渡す限り生い茂る密林。
全く未知の世界の中にただ一人、オレは放り出されていた。
明日の今頃、それはいつもどおり何も変わらない人生になるはずだった。
変わる/変わりたいと願った自分は、いつか目に映る世界が別のものになるのを望んでいた。
だがそれは期待を裏切る。 平凡な毎日に石が投げ込まれる。
日常の中にいる自分ではなく、ましてや理想の自分でもなく、想像を超えた全く違う明日/世界がオレを迎えた。
それは…希望とは掛け離れた遠い世界だった。
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