ウミホタル
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りの頃のこと。
あの日私は街に出かけた帰り道に偶然立ち寄った岬で両親とはぐれてしまったの。まだ五歳の女の子、独りでは心細いわ。はぐれてしまった両親を探すために岬中を歩き回っていたところで出会ってしまったの。
「アタマがゴロゴロー♪ メダマはドコへイッター♪ ユビはキッチャウゾー♪ ナイゾウはブッチュー♪」
能天気な子供の声で歌われる残酷な歌と時折聞こえてくる、グヂュリ、ブヂュリ、肉と肉が擦れるような、引きちぎられるような、ナニカを潰したり、ナニカが弾け飛んだような、音はなんの音?
まだ五歳の女の子。好奇心と探究心が強い子供。だから私はミテハイケナイものを見てしまうの。岩山の向こうで行われていた、
「アタマがゴロゴロー♪ メダマはドコへイッター♪ ユビはキッチャウゾー♪ ナイゾウはブッチュー♪」
私と同じくらいの男の子が楽しそうに縦に真っ二つ引き裂いたハサミを持って、くるくると踊るように回っている姿をね。
彼の顔には赤い液体が飛び散ったようについていたわ。
彼が着ている白いTシャツは飛び散った赤い液体で真っ赤になっていたわ。
彼が両手に持つハサミの刃の部分は真っ赤なドロリとした液体が滴り落ちていたわ。
五歳の私でも分かった、彼はきっと。
[下校時刻となりました。まだ校舎に残っている生徒は速やかに下校しましょう]
「ええっ!? もうそんな時間なんっ!? まだ何にも決めてないでっ」
苛立ちの声をあげる蛍。
ああ……もうそんな時間なのね。下を向いて見ると握りしめた拳がぶるぶると小刻みに震えて頭からは首筋をそって冷やりと冷たい汗が流れる。これが冷や汗というものなのね。
はあっと大きくため息をついて、帰り支度をしましょう。まだ教室に残っていることが先生にばれると酷く面倒くさいことになるの、だからさっさとお暇した方が身の為ね。
まだ帰りたくなと、駄々をこねる蛍を無理やり引きずって連れ出し校舎を出て来て校門前、
「散る花見たいっ」
引きずられていた蛍が急に立ち上がりそんなことを言いだしたの。
もう太陽は沈みかけ。今の時期は日が沈むのが早いからうら若き乙女としては早く家路につきたいのだけど、と言ってみたけれど無意味だったわ。
今度は私が引きずられて散る花が見れる場所に連れて来られてしまうのね。本当わがままで面倒くさい幼馴染ね。
「綺麗やなー」
そうね、とここは返しておきましょう。
蛍が言っていた散る花と言うのは寄して返しす海の波が白い花びら散っているように見えるとのことよ。私にはただの波にしか見えないのだけど。
「おっ。おったで」
嬉々とした表情で蛍が指さす方向にいるのは長い黒髪をなびかせた背の高い女の人。彼女の足取りは重たく、右へ左へとよろよろとして真っ直ぐ歩けていない
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