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歌集「春雪花」
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 秋暮れの

  朝に匂ふ

   冬の香の

 想いに滲む

    有明けの月



 秋の終わり…寒いと思い目が覚めると、外は未だ薄暗い…。

 起き上がって窓を開けば息は白く…冬の香りが鼻を擽る…。

 もう…冬になるのだと思うと、彼に会いたくなり……会いに行こうかなどと考え…馬鹿馬鹿しいと自分を謗る…。

 見れば幽かな月影が…少しずつ顔を出し始めた太陽の光に微睡んでいるようで…少しだけ滲んで見えた…。



 葉を散らし

  冬待ちにける

   桜木の

 春来たらずば

    花も咲くまじ



 葉を落とした桜の木…そうして静かに冬を待つ…。

 あれだけ騒がしかった夏の蝉…今では嘘のように静まり返っている。

 あぁ、桜よ…そうして堪え忍んでも、もし春が来なければ花も咲くまい…。


 私のように…ずっと真冬のようであったなら、桜よ…お前はどう生きただろうな…。




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