第五章
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そのうえでラバウルに行く話をするとそこのお姉さんに少し驚かれてそのうえでこう言われた。
「あの、ラバウルですか」
「そこに行きたい」
「そうですか、それはまた」
「行く奴はいないか」
「大抵の方はハワイとかですからね」
「そうなのか」
「はい、ですが」
それでもという返事だった。
「パスポードやホテル等の手配はこちらでしますので」
「それでか」
「全て出来ましたら」
その準備がというのだ。
「連絡します」
「よし、じゃあな」
「暫くお待ち下さい」
最初は驚かれたがそれでもだった。
旅行会社側は誠実に対応をしてくれて大林はラバウルに行くことになった、成田空港から一緒に行くと言った妻とだ。
二人でラバウルに行く、日本ではもうそんな季節ではないが驚く程暑い。だがその暑さにだ。
大林は笑顔になってだ、共にラバウルに来た妻にこう言った。
「ここはずっとな」
「こんな暑さだったのよね」
「戦争の話になるといつも言ってたな」
「そうよね」
「とにかく暑いんだ」
このラバウルはというのだ、日差しは強く空も青く雲は白い。
「日本の夏よりもな」
「そうね、けれど今の御前さんは」
妻は夫のその顔を見て言った。
「嗤ってるわよ」
「そうなっているか」
「ええ、本当にね」
こう言うのだった。
「とてもね」
「そうか、それはな」
「それは?」
「ここを出た時はな」
あの戦局の悪化で本土に戻った時のことをだ、大林は思い出してそのうえで傍らにいる妻に話した。
「残念だったんだ」
「戦争に負けそうだったから」
「そうだったんだ、けれどな」
「今こうしてね」
「戻ってきたって思うとな」
自然にというのだ。
「嬉しくなるな」
「そうなの」
「ああ、もうな」
目の前を見た、丁度そこに基地があった。海軍の航空機が集結していた一大飛行場があったのだ。
「飛行場もないけれどな」
「ここにあったのよね」
「ああ、けれどな」
彼がいたきちもなかった、だがそれでもというのだ。
「戻って来たんだ」
「そう思うと」
「嬉しいな、あの時が本当にな」
ここでだ、彼はまた海軍にいた時のことを思い出した。今度思い出したものは何かというと。
「さらばラバウルよだったな」
「あの歌ね」
「また来るまでだったがな」
「本当にまた来たわね」
「戦争は終わった、けれどな」
それでもというのだ。
「戻ってきたな」
「そうね、だからなのね」
「嬉しいな、ずっと戻ってきたかったんだ」
あの時の残念な気持ちをずっと引きずっていたというのだ。
「それで胸につっかえていてな」
「それがおりた感じね」
「そうだ、本当に嬉しいな」
「それは何よりね、じゃあ」
「ああ、旅
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