第四章
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ふとだ、東京から静岡まで里帰りに来た孫達にこんなことを言われた。
「海外旅行?」
「うん、今流行ってるんだ」
「僕達も行って来たよ」
「ハワイまでね」
「家族皆でね」
「海外旅行なんてな」
それこそとだ、大林は孫達と一緒に家の縁側で西瓜を食べつつ言った、妻が三角に小さく切ってくれた冷蔵庫で冷やしたそれをだ。
「わしはとてもな」
「行ったことないの」
「そうなの」
「そんなの行ける時代になったんだな」
このことに驚いていたのだ、孫達の話を聞いて。
「夢みたいだな」
「夢じゃないよ」
「ハワイもの凄く楽しかったよ」
「暑くて太陽も奇麗で」
「お空も海も青くてね」
「暑くてか」
そう聞いてだ、大林は氷で冷やしたやはり妻が出してくれた麦茶を飲みつつ言った。
「空も青いか」
「そうだったよ」
「僕達皆で海で泳いだよ」
「美味しいものも食べたしね」
「変わった果物もね」
「それだったらあれだな」
ここまで聞いてだ、彼は孫達にこう言った。
「ラバウルみたいだな」
「ラバウルって何処?」
「ハワイじゃないよね」
「そんなところもあるの」
「お祖父ちゃんが戦争の時にいた場所だ」
そうだとだ、大林は孫達に話した。縁側の彼から見てすぐ右手には庭があり家の壁を隔てたその先には彼の家の茶畑が広がっている。実に見事な茶畑だ。
「そこはな」
「ふうん、そうだったんだ」
「お祖父ちゃんそこにいたんだ」
「戦争に行ってたのは知ってたけれど」
「そのラバウルって場所にいたんだ」
「ああ、しかし海外旅行に行けるならな」
それならとだ、彼は言った。
「ラバウルにも行けるかもな」
「じゃあ行ってみたら?」
「そうしたら?」
「ラバウルにね」
「行ってみたら?」
「そうするか」
この時は孫達に軽く返した、だが。
夜になって孫達が寝るとだ、彼は妻に言った。
「ラバウルにな」
「行くっていうのね」
「そうしようか」
こう言うのだった、二人の寝室でそれぞれの布団の上に座ったうえでだ。二人共夏用の軽い寝巻姿だ。
「そう思った」
「海外旅行ね」
「行って来ようか」
「お金があるかどうかね」
「あったらな、あとはどうするか」
金があればというのだ。
「わしはこうしたことは全然知らないからな」
「旅行会社の人に聞いたら?」
妻は旅行のことは何も知らない夫にこう返した。
「静岡の方のね」
「静岡市のか」
「そうしたら?」
「そうだな、そうするか」
少し考えてだ、大林は妻に答えた。
「そしてな」
「実際にね」
「ラバウルに行くか」
「そうしたら?」
「ああ、暇な時に静岡に行って来るな」
そうしてラバウルに行く話をするというのだ、そうしたことを話してその
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