第三章
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「食べ飽きてもいないし」
「じゃあね」
「これからも食べるのね、蒲鉾」
「そうしていくのね」
「そうしていくわ」
実際にとだ、幹子は友人達に笑顔で答えてだった。
家で蒲鉾を食べながら高校生活を送り大学にも進学し遂にだった。
大学を卒業して就職した、それからも四年程祖父と一緒に過ごしていたがある日祖父に夕食、就職してからは完全に年金生活に入っていた祖父が毎晩作ってくれる様になっていたそれを食べながら話した。
「実は好きな人が出来てね」
「それでか」
「そう、結婚しようかなってね」
「どんな人だ?」
源太郎は孫娘を見て問うた。
「一体」
「今度うちに連れて来るから」
「そうしてか」
「お祖父ちゃんにも紹介するから」
「その時にか」
「ええ、どんな人かをね」
源太郎のその目でというのだ。
「見てね」
「それじゃあな」
この話からだった、幹子は祖父に恋人を紹介した。すると。
源太郎はその彼と会ってだ、幹子に笑顔で話した。
「いい人だな」
「それじゃあ」
「幸せになれ」
これが祖父の返事だった。
「二人でな」
「じゃあ私達と一緒にね」
「一緒に?」
「住まない?」
こう言うのだった。
「私達と」
「三人でか」
「ええ、どうかしら」
「ははは、それだと邪魔になるだろ」
源太郎は笑って幹子とその恋人、涼し気で優しい顔立ちの彼に話した。
「だからな」
「いいの」
「ああ、ただわしが死んだらな」
「死んだらって」
「人間何時かは絶対に死ぬ」
幹子に優しい声で話した。
「だからもう言っておく」
「そうなの」
「ああ、わしが死んだらこの家と土地は好きにしろ」
「そうしていいの?」
「たった一人の孫だからな」
それでというのだ。
「全部御前にやる、好きにしろ」
「そうなの」
「蓄えもな」
源太郎は自分のそれの話もした。
「全部御前にやる」
「それもって」
「だから御前はたった一人の孫だ」
「だからっていうのね」
「遺産というと大袈裟だがな」
「全部なのね」
「御前のものだ、しかし今はな」
源太郎は幹子にあらためて話した。
「わしはこの家に住む」
「一人でもいいの」
「ああ、御前達がこの家に住みたいならいいが」
それなら一緒に住もうというのだ。
「そうじゃないならな」
「このお家でなのね」
「わし一人で住む」
「実はです」
その恋人が源太郎におずおずと切り出してきた。
「結婚したら僕の実家で」
「そちらでか」
「一緒に住もうって話になっています」
「そうなのか」
「親父が糖尿で。お袋は元気ですが」
「そちらのお父さんのこともあってか」
「それでなんです」
いざという時に備えてというのだ。
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