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アメリカンハウス
第六章
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「どうも駄目なのよ」
「そうなんだな」
「快適ではあるけれどね」
「広過ぎるか」
「そう、私としては」
「じゃあ子供作るか」
「すぐには無理でしょ、それに三人になっても」
 例え子供が出来て家族が増えてもというのだ。
「この家は私達には広いわ」
「そんなものか、その広さがいいのにな」
「何かお家のことでは完全に平行線ね」
「俺は最高の気分だからな」
 憧れのアメリカの家に住めてだ。
「こんないい気分はないさ、ただそういえば親父とお袋を誘ったらな」
 木村の両親にアメリカで一緒に暮らさないかと転勤前に誘ったのだ。
「断られたな」
「そりゃ断られるわよ」
 それは当然だと返した佑衣子だった。
「いきなりアメリカに移住とかね」
「無理があるか」
「そうよ、普通は」
「いい家なんだがな」
「あなたは別にしてやっぱり日本人はね」
 佑衣子は何とかステーキを食べ終えた、それからワインを一口飲んでそれから今度はパンの残りを食べつつ夫に話した。
「日本人に合ったお家があるのよ」
「その広さがか」
「そうしたものよ、やっぱりね」
「そして人それぞれか」
「あなたはよくても私はだからね」
 広さを持て余しているというのだ。
「そこは本当にね」
「それぞれってことか」
 夫は既にステーキを楽に食べ終えアップルパイを食べている、パンも食べ終えており残りはそれだけだった。
「そういうことか」
「そうなるわね」
「じゃあ御前にとってアメリカの家は合わないか」
「嫌じゃないけれどね」
 快適なのは事実であるがだ。
「私としてはなのよ」
「成程な、誰もが俺みたいじゃないんだな」
「あなたにとっては夢を適えられて幸せでも」
 それでもというのだ。
「誰もがって訳じゃないってことね」
「そういうことなんだな」
「けれどあなたは夢が適って」
「実際に最高の生活でな」
「何も不満はないわね」
「夢みたいな気分だ」
「そういうものよ。まあ私も何だかんだでトータルでいい感じだから」
 確かに広さを持て余して掃除に困っていてもだ、全体的にはというのだ。
「アメリカにいる限りはね」
「ああ、じゃあな」
「このお家で暮らしていきましょう」
「何年になるかわからないがな」
 こう話してだ、木村は佑衣子と共にアメリカでアメリカの家に住んで幸せに過ごしていた。そしてまずは男の子そして女の子も出来てだった。
 さらに幸せに過ごした、そうして十年以上この家で過ごして転勤となった時にだ。木村は佑衣子にがっかりとして言った。
「夢の終わりだな」
「やっと日本に帰られるわね」
「そこでそう言うか?」
「だってずっと広くて困ってたから」
「結局最後の最後までそう言うんだな」
「それであなたはなのね」

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