第一章
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必死の努力
努力が大事である、よく言われている言葉だ。だが。
この言葉をだ、石井望はこう思っていた。
黒髪を奇麗に伸ばし前は目のつすぐ上で切り揃えている、その目は一重でアーモンド形の一重だ。唇はピンクで顔はホームベース型である。背は一四五程だ。
その望が母親にだ、こんなことを言われた。
「出来ないならね」
「努力しろっていうわね」
「わかってるじゃない」
「だって私天才じゃないから」
自分で母の寅美、自分がそのまま歳を経た様な外見の彼女に返した。
「だからね」
「努力してよ」
「出来る様になれっていうのね」
「そうよ、というかね」
「というか?」
「モーツァルトはね」
その音楽の天才だ、誰もが認めるまでの。
「いつも作曲してたから」
「つまり努力してたのね」
「何でも作曲しないと苦しいっていう位にね」
「いつも作曲してたから」
「天才だったのよ」
「つまり努力を努力と思わないってことね」
「天才はね」
「九十九パーセントね」
望はあらためて言った。
「その努力ね」
「エジソンね」
「ええ、一パーセントの閃きね」
「天才とはね」
「この言葉って確か」
望はこうも言った、
「この二つで天才って意味じゃなかったのよね」
「九十九パーセント努力してもよ」
実際にとだ、寅美も娘に話した。二人で休日適当に野球の試合を観ながら。観れば二人が応援している阪神が五回を終わって巨人、憎むべき全人類不変の時に二十点差で圧勝している。しかもここで福留の満塁ホームランが出た。見れば巨人はまだノーヒットで得点も入っていない。
「一パーセントの閃きがないとね」
「つながらないよのね」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「その閃きもね」
一パーセントのそれもというのだ。
「何かしたり観たり読んだりしないと」
「閃かないのね」
「閃きって本当にぱっと出るでしょ」
「不意にね」
「それが出るにもね」
「努力していてこそなの」
「結局それよ、努力をしていないと」
さもないと、というのだ。
「どうしようもないのよ」
「そういうことね」
「阪神だってそうでしょ」
今現在敵地東京ドームで巨人を思う存分成敗しこの世に正義があることを知らしめているチームもというのだ。
「金本監督が必死に練習させてね」
「努力させて」
「強くなってるのよ」
そうだというのだ。
「練習しないとね」
「阪神も弱いままね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だからね」
「そうよ、努力しなさいね」
「何でもね」
「ええ、お父さんだってお仕事も頑張って」
「ダイエットにもね」
「そうよ、油断したらね」
「太るわよね
「あんたも注意しなさいね」
寅
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