第一章
[2]次話
十月の嵐
私は秋が好きだ、けれど今は車窓の外を見て不機嫌な顔になっているのが自分でもわかった。それは何故かというと。
「雨、しかもね」
「うん、嵐だね」
「折角いい季節なのに」
車を運転している彼に言った。
「嵐だなんて」
「それでだね」
「秋の街の空気が好きなのよ」
景色も人達のファッションも街並みもだ、勿論料理も。
「けれどね」
「雨はだめ」
「秋は雨も多いけれど」
どうもそんな気がする。
「その雨、特に嵐はね」
「葉も散るるしね」
「折角の紅葉が」
紅葉や楓、銀杏といった木々のそれがだ。
「そうなるしお花も散るし」
「だからだね」
「嫌いよ、身体も冷えるし」
「とにかく嫌いなんだね」
「秋の嵐位悪いものはないわ」
心からこう思っている。
「本当にね」
「それじゃあこれからどうするのかな」
「街に出たかったけれど」
車窓のその外にだ。
「けれどね」
「急に降ってきたからね」
「もういいわ」
正直そんな気持ちだった。
「今日はお家でゲームよ」
「新作の?」
「それをするわ」
「そうするんだね」
「外に出てもいいことがないから」
嵐だからだ、本当にいいことは何一つとしてない。
「だからね」
「それじゃあ部屋に行く?」
「そうするわ、秋はスポーツの秋でもあるけれど」
「この雨じゃね」
「サッカーもやってないし」
それにだった。
「神宮の試合も中止よ」
「折角ヤクルト調子がいいのに」
私も彼もヤクルトファンだ今日の試合はヤクルト対阪神だ。
「これじゃあね」
「どうしようもないね」
「試合もやらないだろうし」
それならだった。
「もう家でゲームして過ごすわ」
「折角の休日なのにね」
「昨日まで晴れていたのに」
それがだった。
「急にこうなったわね」
「世の中そんなものかもね」
「休日にこそ嵐になる」
「そんなものかもね」
「仕事の時はどうでもいいの」
オフィスで庶務だ、彼も事務仕事だ。だから雨が降っても別に支障や嫌なことにな仕事でもない。
「その時はね」
「どうでもいいけれ」
「休日にこそ晴れて欲しいのに」
本当にそうした時こそだ。
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