巻ノ百九 姉妹の絆その十二
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「何といってもじゃ」
「向かわれますな」
「そうじゃ、わしが第一にじゃ」
まさにというのだ。
「向かいそうしてな」
「そのうえで」
「ことを収める」
「わかり申した」
「ではな、それで話は変わるが」
ここで家康は天海にこう尋ねた。
「お主は権勢等は求めぬな」
「昔からそうしたことには関心が及ばず」
「仏門にか」
「はい、そして学問にです」
「興味があるか」
「左様です」
天海はすぐに答えた。
「昔より」
「お主もう八十かそれ位というが」
「左様ですな」
「これまで謀よりも神仏や風水から天下の政をわしに言ってくれた」
そしてだったのだ、天海は。
「江戸についてもな」
「都を見てもわかる様にです」
「天下を長く穏やかに治める為にはか」
「はい、決壊も必要であり」
「江戸もじゃな」
「しかと神仏の結界を築くことが大事です」
それこそがというのだ。
「ですから大御所様にもお話したのです」
「成程な」
「江戸は都と同じく四神相応の地です」
「青龍、白虎、朱雀、玄武がおるか」
「その中央にいれば」
まさにというのだ。
「天下は治まります」
「平安にじゃな」
「都から治める場合と同じく」
「それでわしに色々と教えてくれたか」
「そうなのです」
「謀よりも教えか」
「拙僧の場合は」
「わかった、ではな」
「はい、これからも」
「教えてもらう」
何かと、というのだ。
「頼むぞ」
「その様に」
「江戸は栄えるか」
「今はまだはじまったばかりですが」
「やがてか」
「数十年もすればです」
「天下一の町となるか」
家康は目を光らせて天海に問うた。
「まさに」
「今人が急に集まっておりますな」
「関東、いや天下からな」
「江戸城を囲んで」
「人が集まりか」
「はい、そして」
それに加えてというのだ。
「商い等も盛んになり」
「栄えていき、か」
「天下一の町となります」
「信じられぬな、まだ」
家康は嘆息する様にしてこうも言った。
「それがな」
「最初に江戸を見た時を思えば」
「何もない草原だった」
当時の江戸はというのだ。
「廃城の如きみすぼらしい城があるだけだった」
「あの江戸城ですな」
「小田原や鎌倉の方が栄えておってな」
北条家の本拠地の相模や伊豆のことだ、鎌倉はかつて幕府がありまだ人がそれなりにいるのだ。
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