巻ノ百九 姉妹の絆その十一
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「そうしたものでした」
「そうか、かなり悪いか」
「残念ながら」
「覚悟はしておったが」
「はい、しかも」
天海は家康にさらに言った。
「このことはこれに終わらず」
「さらにか」
「悪いことが起こる様です」
「左様か」
「しかしここで膿を出し切らねば」
「後々までじゃな」
「災いとなるかと」
その危険もあるというのだ。
「ですから」
「ここはじゃな」
「出来る限り人を死なせるべきではありませぬが」
「それでもじゃな」
「膿は出し切りましょうぞ」
「どうもあ奴はな」
家康は大久保家の主だった大久保長安のことも思った、老中として権勢も振るってきたがもうこの世の者ではない。
「華美を極めた暮らしにな」
「それにですな」
「うむ、妾が七十人も八十人もおってな」
「供の者達を連れて天下を練り歩いても」
「したい放題だった」
家康は苦い顔で言った。
「どうにもな」
「それを見ましても」
「既に膿となっていたか」
「大御所様としましては」
「わしも捨て置けずその場の藩の者や奉行達に無体はさせぬ様に銘じておったが」
しかしというのだ。
「相手は佐渡の金山を握りな」
「その後は老中にもなられ」
「権勢を極めていた」
「そうした方では」
「誰も何も出来なかった」
「そのうえで」
「したい放題となっておった」
まさにというのだ。
「それが厄介であった」
「そしてその権勢がまだ。ですな」
「大久保家に残っている、あ奴の子達はそうしたことはせぬが」
父と違いだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「ことと次第ではじゃ」
「大久保家を潰し」
「あ奴の子達もじゃ」
「罰しますか」
「そうする」
その覚悟もしているというのだ。
「天下の為にな」
「天下を考えますと」
「やはりどうしても」
「時として厳しくせねばならぬな」
「これが民百姓ならば」
「甘やかすのはよくないが」
しかしというのだった。
「それでもな」
「情はですな」
「かけてな」
そうしてというのだ。
「罪は一等か二等減じるが」
「こうしたことは」
「それも出来ぬ、ではな」
「はい、それでは」
「凶、それもとてつもないことでもな」
「向かわれますか」
「わしが逃げてどうする」
天下人の自分がとだ、家康は言った。
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